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 新春特別企画 - ZDP座談会2014 2014/01/01 00:00

新春特別企画、ZDPメンバーが1年の活動を振り返る『ZDP座談会』。WSC2013の真実が、今ここに明かされる。
ご意見・ご感想・苦情は、こちらからお寄せください。(s)

目次




【WEMGP戦】

袖ヶ浦1 http://www.zdp.co.jp/2013/2013summer1.html#A20130602
秋田 http://www.zdp.co.jp/2013/2013spring2.html
袖ヶ浦2 http://www.zdp.co.jp/2013/2013spring1.html#A20130414
菅生 http://www.zdp.co.jp/2013/2013autumn1.html#A20130908
NATS http://www.zdp.co.jp/2013/2013autumn2.html#A20131116


籾井 基之
(株)本田技術研究所 勤務。
Tachyon/モスラを設計。

S:今年は初戦が4月に袖ヶ浦で、GWの秋田を挟んで、6月に袖ヶ浦でもう1回開催。9月の菅生の後、例年関西で開催されていた ツーアンドフォー主催の eco car festa が今年の開催を見送り、シーズン当初開催が計画されていたいわき市での大会も中止となり、いきなりNATSで最終戦を迎えることになってしまいました。
4月の袖ヶ浦では、MONO TTDCが1-2、6月の袖ヶ浦では、秋田初優勝となったfirst step AISIN AWが優勝。

木村:MONOの新車が優勝したのはどこでしたっけ?

S:それは最終戦のNATSですね。

木村:おめでとうございます。優勝すると講習会の講師をお願いすることになるのですが、MONO TTDCさんもfirst step AISIN AWさんもお願いさせていただきました。

S:同じ人が勝ち続けていると、講師のバリエーションも無くなってしまいますからね。

木村:そうなんですが、ネタに困ったときは初心に返れと池上敦哉が言っていました(笑)。
最先端の話では無くて、基礎を話せば良いのだと。

池上:エコノムーブに関しては新車どころか出場もしていないので、新しいネタは無いけど、過去の講習会で初めて来た学生の話を聞くと、『池上さんの内容はわかりやすかったけど、他の方の話は内容が難しすぎました』という意見もあるので、入門編はあったほうが良いのです。

木村:全体では必要ですね。講師の方に止めて欲しいのは、長いチーム紹介。何年何月に何をやったとか、それは製作講習会のネタでは無いし、1時間以下コマの中で延々チーム説明をされると、つらい。

20130505 - 2013 WEM Day2

池上:そんなこと言うと、みんな講師を引き受けてくれなくなってしまいますよ。

籾井:それが参考になるチームもあるのでは?

池上:他の人は、こうやってステップアップしてきたというのが見られるのも、重要ですよ。

木村:そうは言うけど、1/3ぐらいそれをやったチームもあるんですよ。

池上:それは、自己紹介を延々とやる私と同じです。

佐川:技術的なネタだけで、全部の時間説明するのは難しいでしょうから、ある程度は必要だと思います。

S:ちなみに、初戦の袖ヶ浦は、出走6台と非常に寂しい結果に。時期的には、秋田の直前で学生チームでは、新年度早々でチームが立ち上がっていないということもあります。

池上:東海大はそこを狙わないと。

S:東海大は、狙うも何も、今年はエコノムーブ戦に、一戦も出ていないじゃないですか。

佐川:Facebookの非公開グループへの書き込みによると、東海大の電気自動車チームは崩壊の危機を迎えているような・・・。

池上:活動内容について話し合いをするとか、みんながやる気が無いからとか。

S:エコノムーブ戦に話を戻して、秋田は籾井君の5連覇が、first step AISIN AWさんに阻止されました。

池田:それは初戦の袖ヶ浦で、モノコックに接着してある金属部品がはがれたことで、秋田に万全の状態で行くことができたからかも。あそこではがれていなかったら、秋田ではがれていたかと。

木村:籾井君としては、昨年の秋田はベストな状態だったの?


池上 敦哉
ヤマハ発動機(株)勤務。ZDPチーフエンジニア。Tokai Challenger/でんちくんシリーズを設計。

籾井:ベストでは無いですね。敗因としては、ペースを守って走行できなかった事。まずバッテリーが変わった事。凄く容量が増えたという噂は聞いていたけど、テストもせずに現地に行って、実際に走り出したら周りが増えていると言っている割には、思っている以上に出ないので、動揺して必要以上にPWMを絞り気味で走ってしまった。

池上:心のPWMを絞ってしまったのか。

籾井:そんなことは気にしないで、例年はシミュレーションの予定通り全開で走っていたのが、今回動揺してPWMで絞った事で、効率の悪い状態で走ってしまった。

S:決勝前日の公式練習では、パンクして早々に止まっていたよね?

籾井:それも原因の一つです。予選では、自分で繋いだ古いラテックスチューブが劣化していて、繋いだところでは無い箇所が破れてパンク。決勝レースのスタート位置が例年と比べてだいぶ後方になってしまって、特に1周目はいつも通りのペースで走れなかった。

佐川:バッテリーの充電でも、最後の電圧の上がり具合が、前と感覚が違いましたね。

籾井:あと今にしてみれば大きかったのが、モータコントローラの同期整流が無かったこと。2011年コースレコードを出したときは、同期整流が正常に動作していたんだけど、翌年それが現地で動かなくなったものの、風も吹いてバッテリーの状態も良くなかったこともあって周りも全体的に記録が伸びず、後続に1周差がつけていたので、同期整流無しの影響がよくわからなかった。それで、2013年も同期整流が無い状態で出走したのだけれど・・・

木村:同期整流は効くと思いますよ。特にPWMを絞った状態では、うちの場合ベンチでは、70%ぐらいまで絞った状態で、特電アモルファスのオリジナルでフルスロットと同じくらいの効率が出た。ただし、うちも安定して動作しなくて、ファラデーマジック2だと動くけど、コントローラを共通化していた池上さんのでんちくんに搭載すると、なぜか同じ物が動かないとか。

池上:いろいろありましたね。こっちは動くけど、こっちは動かないとか。

佐川:池上さんは、よくコントローラに嫌われていたほうでしたね


木村 英樹
東海大学工学部 教授。博士(工学)。

木村:今にして思えば、ドライバーの使い方だったのかもしれない。スタートするときに、いきなり全開にしてしまうドライバーだと動かなくて、じんわりとアクセルを開けるドライバーだと動作していたのかも?

池上:そうですか? でんちくんは整備中でも動かなくなっていたけど(笑)。

木村:元々の安定性もありますが、それを突破した後の使われ方は、あると思いますよ。

佐川:モータコントローラを作った立場としては、1周目の折り返し地点を通過するまでが、どきどきしていました。折り返しの加速で、コントローラが壊れるのではないかと。

S:モータ話でいうと、秋田3位は無改造のミツバDDを搭載したTeam BIZONの旧車。

木村:ミツバは無改造と言っても、性能が良いからね。

S:下手にモータをいじっても無駄で、やはり車体をしっかりとしなさいという事ですね。

籾井:全力で走ってチューニングしたモータを搭載した新車が、どノーマルのモータを搭載した旧車に負けてしまって、ショックだったらしい。

池上:それは柳原さんが、どんどん新しいトライをしちゃうという噂は聞いたことがあります。柳原さんが、いろいろと頑張って作ってくるのだけど、動作確認ができないまま本番投入。それがトラブって、エネマネの田村君がムッとして、その横にいる須藤君が気まずい雰囲気の中で、ひっそりとする。

木村:あー、それはありそうだ。テプラで『マル秘』とか貼ってあるパーツは、危なそうですね。

S:トシヤンさんが、3年越しのデビュー戦で4位入賞。記録も84kmですよ。元旦からこたつの上で作業をした努力が、報われましたね。

S:first step AISIN AWの中村さんは、秋田のWEMに挑戦すること11年目で優勝です。

籾井:僕は13年かかりましたよ。Tachyonが5連覇できなかったので、キムヒデはうれしいんじゃないの?

木村:そこだけは勝っていますね。コースレコードも、ファラデーマジックがまだ2位を守っているしね!

S:WEM GP戦最終戦のNATSでは、MONO-FがデビューWIN。

20131116 - 2013 NATS EV RACE

池上:とんがっているやつですね。

池田:トシヤンさんもとんがっていますよ。

池上:どっちがとんがっているのだろうなー。

籾井:MONO-Fの寝ているスクリーンは、視界を考慮して最初から二次元の平面にしていますね。

S:キャノピーの曇りを防止するために、前面のキャノピーの部分は独立した気室にしていましたね。

池上:がんばっているね〜。

籾井:構造は、『籾井さんのTachyonをぱくりました』と言われましたが、リヤ周りは片持ちの独特な構造になっています。ホイールもMONOさんは、元々はカーボンホイールを使っていたのですが、Tachyonのアルミホイールが、振動を吸収しているかもしれないということで、そこもぱくったと言っていました。僕自身は、振動を吸収させようという意図は、特にありませんでしたが。

S:今年のGWは、秋田県大潟村で、直接対決だね。

籾井:今年は、辻岡くんが、同期整流は直して出る予定ですが、同じ性能の車で戦ったら、モチベーションの差で、僕は確実に負けます(笑)。

池上:モチベーションの低下具合ならば、私にはかなわないだろう。

佐川:池上さんは、一昨年でしたっけ、雨が上がって走れそうになったら『やばい、晴れてきた』とか言っていましたね。

S:今年東海大はエコノムーブには出ないのですか?

池上:昨年東海大のある学生は、秋に新車をデビューさせるとか言っていたけど、秋はWSCがあるのに、何を言っているのだ?と、発言の意味がわからなかった。

籾井:ファラデーマジック3の雌型は、離型できたの?

佐川:雌型は作りましたが、ゲルコートの厚みが10mmぐらいあったとか・・・

籾井:フランジにダムを造ったらそこに溜まっただけで、製品面にはそれほど付いていないはず。

佐川:設計は卒業生の徳田くんによるものだから、3年がかりですか。サグラダ・ファミリアのようにあと何年かかって完成することやら・・・。雌型は、少し波打っていませんでしたか?

籾井:きちんと脱泡ができていなくて、ふかふかというか、ミルフィーユ状というか・・・

池田:そのままプリプレグを焼く120度の炉に入れれば、型の中に残っている空気が膨張してダメなところが一発でわかりますよ。

池上:そう、だから言ってみました『磨かなくて良いから、試しに焼いてみなよ』と。

佐川:あの雌型に行く前にも、雄型も作り直して二つ目ですよ。

S:いつ完成するのでしょうかね・・・・

池上:現役メンバでエコノムーブやりたいという学生はいないの?

木村:そもそも、自分達で物作りたいという人は少ないのでは? 大会への出場や、作業はやりたいけど、自分で設計開発をやろうという学生は、かなり少ない。
ソーラーカーのレースについては、目標としているレベルが上がりすぎてしまって、ステップアップ用の二軍相当を作って技術レベルを上げていかないと、厳しい。それがエコノムーブかと思っていたけど、今やエコノムーブもレベルが高すぎる。

籾井:相対的にはソーラーカーの前段としてエコノムーブがあるとしても、今の東海大は、それ以前に、カウルも作れないのならば、絶対的にレベルアップをしないとまずいんのでは?

池上:高校でエコノムーブをやっていて、野望をもって東海大に来る学生とか、いないのかな?

木村:いますよ。例えば千葉黎明、秋田工業、平塚工科から来る学生とか。昨年はいませんでしたが。

池上:今年のサンルーラルの予約どうしますか?

木村:今年は東海大ではなく、ZDPとして・・・。

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【Ene-1】

http://www.zdp.co.jp/2013/2013suzuka1.html#A20130804

木村:Ene-1は、ミツバさんが策士策に溺れるで、アヒルエコパレーシング東郷さんが優勝とか?

S:競技は鈴鹿のフルコース3回のタイムアタックの合算で争われるけど、優勝候補のミツバさんや、Team BIZONは、レギュレーションで搭載が義務づけられている5Aのブレーカーを落としてタイム伸びなかった周回があり、コンスタントに好タイムを出し続けた、アヒルエコパレーシング東郷さんが優勝しました。

20130804 - 2013 Ene-1 GP SUZUKA

木村:ブレーカーの選択は難しい。5Aのブレーカーまたはヒューズといっても、即断するものから、ゆっくり落ちるものまで種類がいっぱいある。ヒューズなんて厳密に言えば5Aで切れるものなんて無いのですよ。その中で切れにくい物を選ぶという話になると、競技のポイントがずれてしまう事になる。

佐川:木村先生は、そういう重箱の隅系の、ブレーカー選びとか上手そうですよね。

木村:ちょっとやれば、誰でも出来ますよ。

池上:特注で、ずるい物を作らせそうですね。

木村:10Aのブレーカーに5Aのステッカー貼ってしまえば、車検で誰もわからない。まあ、それは一線を越えてしまっているけど、少なくともゆっくり落ちるタイプのブレーカーに倍の電流を流してもすぐには落ちません。

池上:ブレーカーの搭載の向きによっても違いますからね。

S:向きなんて、関係あるのですか?


池田 信
本職は『流しのレーシングカーデザイナー』。現在は(株)デコに勤務し編集業の傍らZDP事務局を担当。

池田:ありますね。メーカーのカタログに、この角度で取り付けろという注意書きがある。縦向きにつけると一番早く切れる。水平に寝かせると切れにくくなる。

池上:温度によって変わるのかな。

池田:メーカーによるけど、ものによっては冷えピタみたいな冷却シートを貼ると、良いらしい。

籾井:ならばエアインテークをつけて、ブレーカークーラーをつけるとか・・・。

佐川:スタート直前まで冷凍庫に入れておくとか、短時間ならば液体窒素で冷やすとか。

籾井:それは物理的にやばくないか? Ene-1は出たい気持ちはあるけど、コースに合ったモータが完成していないので、未だに叶っていない。

池上:2年連続エントリーだけしていたけど、昨年はエントリーすらしなくなった。

籾井:エントリーするときにモータが無い時は、エントリーを止めようと言うことに、自分の中で基準を改めましたので。

佐川:一昨年、出張帰りに鈴鹿に寄ってドライバーをやるはずだったけど、肝心の車体が鈴鹿に来ないと言うこともありましたしね。

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【ソーラーカーレース鈴鹿】

http://www.zdp.co.jp/2013/2013suzuka1.html#A20130803b

S:総合では、レギュレーションの変更でシリコン系に戻した芦屋とOSUが対決し、OSUが優勝。エンジョイクラスでは平塚工科高が4連覇。STEP江東は、予選ポールポジションからクラス3位に入賞できましたね。3位といえば、ドリームクラスでは、元東海大翔洋高校の静岡ソーラーカークラブ:FALCONが、3位に入賞しています。

20130803 - SUZUKA 2013 Day2

木村:1995年くらいには走っていたので、デビューから20年が経過。しぶといですよ。

池上:ドライバーの大嶋君は、なんだかんだ言って、おいしいですよね。

木村:3位入賞は、東海大チャレンジセンターのFALCONとして、2007年にも表彰台に登っています。あの入賞で翌年、南アフリカ大会に行くことになったのですよ。

池田:大嶋君は熊本の東海大(旧九州東海大)ではヒーローですから。うちの卒業生が世界大会(SASC2012)で2位になったということになっている。その話を聞いて、みんな張り切って、ソーラーカーを復活させたと聞きましたよ。

池上:復活した東海大熊本は、鈴鹿の車検がなかなか通らずに、可哀想でしたよ。
FALCONは、前年の南アフリカ出場の際に、スポンサー企業から新しい太陽電池モジュールを提供してもらって、パワーアップしていますからね。

木村:芦屋大学ソーラーカープロジェクトは、去年からクラブチームとして活動しているとか。

池上:活動資金としては、野村くん他、チームメンバが負担しているとか。偉いよね。
でも、芦屋大学の名前をつけて出場している。

佐川:どこかのチームとは大違い。

池上:ちなみに、奥さんには内緒だと言っていた。

S:ここに書いて大丈夫ですか?

佐川:野村さんから、またクレームが・・・。

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【WSC2013】

http://www.zdp.co.jp/2013/2013wsc1.html
http://www.zdp.co.jp/2013/2013wsc2.html

■レギュレーション発表から設計・製作


福田 紘大
東海大学工学部 講師。博士(工学)。

S:4輪が義務化視界・安全に関して変更された新レギュレーションが発表されたのが2012年6月でした。

木村:でも、車検はあまり厳しくやっていませんでしたね。

福田:特に広告スペースはひどかった。ほとんど見ていない。

木村:Nunaは広告スペースが無いのに、車検を通っていた。

福田:前もって綿密に問い合わせていたのですかね?

木村:一か八かだと思いますよ。最悪、太陽電池を前の2列をはがせば300mm通りますから。
それ用のモジュールも持っていたはずです。そこまで攻めるかという感じです。

池上:抗議するべきだったか。

S:車検をと言えば、やはりあのコンセントレーター(集光器)ですが、この話は後でまとめてしましょう。車体設計の話に戻して、2013年大会のレギュレーション発表後、カタマラン型で行こうと決めたのはいつ頃でしたか?

木村:2012年末ごろでした。当初、池上さんは『左右非対称はヤダ!センターキャノピーが良い」とい言っていましたが・・・

池上:センターキャノピーが良いとは言っていないけど、籾井ぐらいしかわからないと思うけど、左右非対称の設計は大変なんですよ。

福田:センターキャノピーでの空力解析もがんばってみましたが、どうやってもカタマラン型には勝てないので、あきらめたのが2012年12月頃でした。


佐川 耕平
富士重工業(株) 勤務。東海大、東海翔洋高OB。Tokai Challengerドライバー。

S:車体形状がカタマラン型に決定した後は、どのように進んでいきましたか?

木村:それからカタマラン型で、どこまで空力が向上できるかという空力解析が春まで続けられます。

福田:外形のデータを東レ・カーボンマジックに渡したのは4月に入ってからでした。

池上:そこから内部の詳細設計を進めて、実際にすべてシャーシが出来上がってきたのが2011年の時と同じ8月の鈴鹿の頃。

木村:2013年大会の開催が2011年より1週間早くなった分、製作期間が短くなったかな。

池上:前倒しはしたかったのだけど、結果的にはできなかった。

木村:太陽電池は、比較的順調で、パナソニックの国内工業で生産されたものに加え、前大会同行された津毛さんが副社長となって立ち上げを行っている、最新設備のマレーシア工場のセルも使いました。さらに、モジュール製作工程を見直して、
高反射充填剤や反射防止膜のアップグレード・膜厚の最適化等の改善で、モジュールとしての発電効率を22.0%から22.5%へ、0.5%改善することができました。

佐川:わずか0.5%といえばそうですが、これは凄いことですね。

木村:シリコン単結晶の実質的な限界は25%程度なので、このレベルでの0.5%の進歩は大きい。

■車検

S:Nunaは例年、大会事前の広報を積極的にやっていたのが、今年はなぜかあまり出さないと思ったら、車検会場で、Nuna7のコンセントレータの使用が初めて明らかになります。

木村:結局Nuna7は、シリコン太陽電池のセルを391枚貼っていました。これは、あのサイズのセルで、6平米を超えずに貼れる最大枚数です。集光率が1100倍のコンセントレータ用の化合物太陽電池は、セルの面積としては非常に小さいので、残り1枚分以下のさらに半分に満たないわずかな面積で、コンセントレータ用の太陽電池を確保できました。つまり、シリコン系のメインの太陽電池を一枚も減らすこと無く、コンセントレータ用の極小太陽電池を、搭載することができたという訳です。

池上:正直言って、車検の時、あの集光器は、なんちゃってであって、あそこまで実力があると思わなかった。効率の高い集光型は、もっと冷却をしないと発電できないと思っていた。

木村:レース後、SEMPRIUS社のコンセントレータについては、文献やリリース等をいろいろ調べましたよ。

http://www.semprius.com/

セル自体は0.6mm*0.6mmと非常に小さいけど、集光率が1100倍なので、集光レンズは20mm*20mm。そのレンズが1ユニットあたり縦:22個、横:30個なので、440mm*600mm。これが6枚搭載されていたので、合計1.58平米。変換効率の公称が35.5%なので、定格で550W以上の発電が集光器で確保できていたことになります。
冷却については、1100倍と言う数字は大きく見えても、実際は20mm*20mmのレンズだから集光しても極端に高くなるわけではなく、せいぜい80度ぐらいだったんじゃないかな。だから化合物のセルならば、冷却もセルの後ろの板程度でも問題無し。オリジナルはケースが鉄ですが、このケースをカーボンにして軽量化し搭載していました。ソーラーカー本体に搭載するシリコン系太陽電池の出力が1300W程度なので、割合としてはかなり大きくなります。

池上:Nunaがどれくらいズルイ事をやったのかは、世間に広く知らしめないといけないね。

木村:スタンフォード大の人は、google翻訳してこの日本語の記事も読んでくれるかな?

S:集光器搭載による重量増は、Nunaのリリースには14.4kgと書いてありましたね。現地でも、その後のFacebookでも、わかっている人はNuna7のあの集光器は無いよね、という反応でした。

http://www.nuonsolarteam.nl/nieuws/concentrators/?lang=en

木村:結局これは過去に禁止された、集光面積を車体の寸法よりも増やすアドオンパネルと同じですよ。2013年のレギュレーションでは、集光式ならば1990年代にあったアドオンパネルが再び積めることになってしまった。

S:2013年のレギュレーションでシリコン系太陽電池と化合系太陽電池の混合使用と集光器の使用が許可されました。レギュレーションでは、集光器の集光面積についての規定は無く、セル自体の物理面積でしか規定されていなかったので、アドオンパネルやミラーが禁止された過去の経緯を無視して、コンセントレータと名乗り車体に搭載できれば、ミラーやレンズによる受光面積の拡大は禁止されていないと解釈することもできなくは無かったという事か。

木村:例年ならば、朝晩は比較的雲が多く550Wはそう簡単には出ませんが、今年は朝晩が地平線から太陽がでるような天候だったので、コンセントレータには理想的な天候状態でした。コントロールストップでの充電も含めると、計算上は10-15%程度余計に発電が確保出来ていたことになります。

福田:結局朝晩の充電がダメだったのは、4日目の夕方と5日目の朝だけでしたね。

S:あと解せなかったのは、そのコンセントレータを太陽に向ける三脚は、車体に積んでいなくてもお咎めなしだったと言うこと。

木村:そうなんですよ。大会本部はレース中、東海大学には、停車時太陽電池を延長する充電ケーブルは車体に積め、コントロールストップ停車時、充電台(キャンプ用の折りたたみベット)は使用できない、と言っておきながら、Nunaのコンセントレータを太陽に傾ける三脚は停車時に使って良くて、さらにそれを車体に積まなくても良い、という理論がよくわからない。あれは政治的に負けました。

S:あの三脚はNuna7よりも速い速度で、次のコントロールストップへ移動していました。

木村:コンセントレータは角度にシビアで±0.8度以内で合わせないと9割以上の性能が出ないので、三脚は必須だったのでしょう。あのコンセントレータが車検で合法となったのには、Nuna以外にもコロンビアのチームも集光器を用意してきたので、それも追い風となった。

福田:車検会場で、Nunaは発電量を2kWだと言っていて、その時は嘘をついていると思ったけど、コンセントレータと合わせてならば、2kWはあながち間違ってはいませんでした。

S:このNunaが搭載した集光器の実力については、レース後に調査してわかったことで、車検やレース中は、性能はよくわかっていませんでした。車体発表時から変えてきた事として、Nunaは現地で太陽電池モジュールの一部を、GochermannからSunCatに張り替えていました。

木村:今日のシャツは、SunCatをイメージしてチェック柄にしてきたのですが・・・

S:え?? まー、言われないとわからないですねぇ。

佐川:SunCatのパネルは、工場のトラブルで、全部は生産が間に合わなかったと言っていましたね。

http://www.gochermann.com/

http://www.theregister.co.uk/2013/10/10/a_closeup_look_at_nuons_solar_panels/

福田:SunCatのモジュールは、Gochermannと比べてどれくらい違うのですか?

木村:これはわかりませんが、SunCatはSunPowerのかなり良いセルを押さえていたらしく、モジュールとしても効率は高めだったと思われます。
ちなみに、あのチェス盤のような模様ですが、0度と90度のテクスチャをつけることで、クロスハッチング効果により、入射角による効率のばらつきを押さえるという効果らしいのですが、私はイマイチ納得できていません。

 

■予選

S:そしていよいよ予選。
スタート順を決定するために、ダーウィン市内のヒドゥンバレー・サーキットにて、タイムアタックを行います。

佐川:スイマセン、まずは正座します。

木村:まず、バリカンで坊主頭になるタイミングが間違っていたね。予選前日ではなく、スピンしてからやれば良かったのに。

佐川:まさかあのような展開になるとは思わなかったので。

木村:あと、インラップで1回、計測ラップでもう1回の合計2回スピンをしたと言うことを知っている人は、少ないかも。1月19日に放送されるTV番組では、1回しかスピンしていないことになるかも。

福田:(NASAのイケメンソーラーカーオタクの)Siddは、普通は1回スピンさせたら2回目は無いのに、あえてそこで戦いを選んだSagawaは、真のドライバーだ!と評価していました。

池上:優しいなぁ〜(笑)

佐川:言い訳させてください! インラップの1周目の最終コーナーでスピンした後、2周目の計測ラップでは、コーナーリング速度を押さえたつもりだったのですが、やはり同じ場所で滑ってしまいました。

池上:モータも電流モードだと、車輪が浮き気味になっても、一定電流で流そうとするので、トルクがかかり、ホイルスピンはしやすいか。

20131005 - WSC 2013 Day0 qualifying

S:カタマラン型の4輪だから滑りやすかったと言うことはないですか?

木村:荷重分布は、乗員が配置されるフロント左がヘビーで、対角線上の右後輪が一番かかっていないから、そこが滑りやすい。

佐川:レース中パンクしたのも、左前輪でしたね。

池上:出走順も、大会本部の指示で前回優勝だったので、最後となってしまって、条件は悪かったかな。

籾井:佐川くんは、どのくらいのタイムを狙ってアタックしていたの。

佐川:前大会と同じ2分7秒を狙っていました。

木村:でも途中、2分7秒よりも、速いペースで走っていたよね?

池上:目標や練習の時よりも、早いペースじゃないか。練習のタイムで十分だったのに、ドライバーとしてはダメじゃないか。

佐川:練習の時は、バッテリーのセル電圧も低かったんですよ。でも、本番になったら電圧が上がって、トップスピードも伸びるようになって・・・

福田:自分としてはがんばっているつもりは無くとも、スピードは上がっていたかもしれない。

木村:1周目に、砂のある場所に乗って滑ったのならば、2周目はラインを変えて、それを避ければ良かったのに。

佐川:変えましたよ! でも・・・

籾井:1回目に滑ったのならば、2回目は反省を生かして、ペースを落として手堅く完走狙いだろう。さすがに2回は無いから、次は大丈夫。スピンしたラップが計測ラップで無くてよかった!と、思っていたのに。

佐川:最後の滑るところだけは速度を落とそうと思っていたのですが、落とし切れていませんでした。

木村:そこはプロのラリードライバーとの差だったのかもしれない。

池上:関西のソーラーカー忘年会で、芦屋大ドライバーの野村くんに言われました、『佐川くんをドライバーとして使った時点で、勝とうという姿勢が無いです!』と。

木村:でも、他に誰がいるのだ?

池上:三瀬くんにしろと。

木村、籾井、福田、S:あー(なるほど)

木村:でも、三瀬くんは今回ドライバー登録もしていなかったから。

池上:もし私が東海大監督ならば、順位が遅くても東海大関係者を乗せますと言ってはおきました。

木村:でも、南アフリカでは、三瀬くんを乗せているからそれでも良かったかも。最後は、佐川くんなら、十分任務を全うしてくれると信じた監督が悪かったという事で。

S:こうして予選順位が20位となり、トップからかなり遅れてスタートすることになってしまいました。

 

■初日

S:東海大学は20位からスタートですが、Nunaも13位と、ここでの差はあまり無かったのですが。

佐川:Nunaは予選でサスペンションを傷めたらしく、予選後に、補強作業をしていましたね。

S:スタート後は、例年はすぐにスチュアートハイウェイに入りますが、今年は併走した片側1車線の側道を走ることになりました。

池上:最初に白状しておきますが、私のせいで、スタートが遅れました。

S:え?聞いていないよ。

20131006 - WSC 2013 Day1

木村:そんなことが、ありましたね。逆の立場だったら、何を言われたことか。

池上:当初スタートは、1分間隔と言っていたのが、もっと短い間隔でほいほいスタートさせていて、いきなりスタートだというので、指令車に走った際に忘れ物をして取りに戻ったら、今度はスタート地点で演奏しているブラスバンドに行く手を阻まれ・・・

佐川:サポートカーが合流できない事で、ソーラーカーは足止めを食らって、これで後続1台に抜かされました。

池上:スイマセン。でも、先導車だけで先に出ちゃえばよかったのに。

S:こうしてスタートしますが、側道は片側1車線で追い抜くことが出来ず。合流してからも今度は、工事中の片側交互通行で10分ぐらい待たされた。

佐川:エアコンも無いから、暑い暑い。

池上:Nunaもひっかかったのかな?

S:引っかかったとは言っていましたが、同じタイミングでは無かったですね。

籾井:東海大が止まった赤信号では、僕が乗っていた車が先頭でした。日本の片側交互通行で止まる時間より長くて、なかなか青にならなくて焦りました。

池上:あの後、キャサリンまでの間で、サポートカーの1台でタイヤがバーストしましたね。

木村:ちなみにニューサウスウェールズ大のブログを見ていたら、ありがとう東海大学という記事がありました。
ソーラーカーの前方に先行するトラックがいたのですが、ニューサウスウェールズ大はトラブルで工事現場の横に出ていてなかなか戻れないところに、東海大のトラックは我々がその真後ろにいるにもかかわらず、道を譲ってくれたという美談が乗っていました。(笑)

佐川:我々が後ろにいるのに入れたというところが・・・紳士ですから。

S:ダーウィンから316kmにある最初のコントロールストップのキャサリン到着は、2011年よりも30分ぐらい遅かったですね。

木村:記録上だと35分遅れですね。道路工事による停車もあったので、まあ、意外と遅くなかったかな。ちなみに2011年は、クルーザークラスはいなかったけど、今回はクルーザークラスを全部追い抜いてこの時間です。追い抜きが多かったのでエネルギー的にロスだったかと言うとそんなことは無くて、例の片側交互通行での停止もあって、結局、キャサリン出発時は満タンになって再スタートとなりました。

S:キャサリンでの順位は、Twente、Nuna、スタンフォードに次ぐ4位に浮上。30分の義務停車後、再スタート直後にスタンフォードをかわして3位に浮上し次のコントロールストップのダンマラで3位のまま一日目が終了。
日没までの充電は、曇りが無く、コンセントレータには良い条件でした。

佐川:一日目は各チームの車列が長くて、追い抜くのが辛かった。

S:もし、スチュアートハイウェイだったら、片側で2車線あるダーウィン市街のうちに、ある程度遅い車を抜かせていたので、ここまでロスをすることは無かったかもしれない。

 

■2日目以降

S:その後、コントロールストップでNunaと並ぶ範囲にいながらも、なかなか追いつけないという状況の中で、2日目にはペナルティ騒ぎがありましたね。

福田:東海大のサポートカーが、追い抜き禁止区間で追い抜きをしたという事でしたが・・・。

20131007 - WSC 2013 Day2

池上:本当のところは、よくわからないですね。留学生のアナス君が大会本部に確認した内容では、いくつかの危険な走行がまとまって、30分のペナルティという事になっていましたよね。

木村:原因の一つに、ソーラーカーに併走する撮影車がいたというのがありましたが、それは無いと言うことをビデオで証明しました。実際は、うちのサポートカーではなく、おそらく外国の撮影車ですね。

佐川:外国の撮影車は、ソーラーカー乗っているとき併走されて、危ないのであっち行けとサイン出しましたが、それでも並ばれ続けて危険を感じました。

福田:外国の撮影車は、日本のメディア車とサイズや色が似ていましたね。

S:ちなみに2日目、Nunaは、テナントクリーク市街地での速度制限を無視したとかで、10分のペナルティを食らっていますね。

木村:ペナルティで止まっていたその間も集光器で、発電は出来るんですよ。

S:集光器による発電増は、その後もありましたね。レース3日目だったかな?先行車が偵察していたら、スタートを遅らせて充電をしていたと言うことが。

池上:本当にあれが得策だったのかな?

木村:リードしている状況でバッテリーが満タンでなければ、発電量が増えるので、多少停車時間を伸ばしたあたりが最適解かもしれないね。

池田:用意周到なNunaならば、そう言うプログラムを準備してそう。

福田:彼らはそう言う点では、自分達の車の特性をきちんと把握できていたのかもしれない。うちはまだ、よくわからなかった。

S:内陸部に入り逃げるNunaとの差を詰めようとペースが上がりはじめると、モータ最高速の問題が発生します。

20131008 - WSC 2013 Day3

木村:2日目はまだそうでも無かったのですが、3日目にそろそろ追いつかないとならないので、時速100km以上を出そうとしたときに、モータの特性上、これ以上速度が出せないという事態が発生しました。

佐川:この話をするには、元々設計では平均速度85km/hだったという話になるんですよ。

籾井:走行抵抗が、現地でだんだんわかってくると言うのは、あまり良くないですね。エコノムーブでも走行抵抗がわかっていないと、勝負できませんから。

佐川:現地どころか、レース中に初めてわかっても・・・

福田:勝負する前にわかっていないとダメですね。

籾井:CFDでも絶対値はわからないですね。

木村:言い訳っぽく聞こえますが、速度設定は間違っていないと確信していますよ。だって、4輪のデカキャノピーになって、なんで110km/hとか出さないといけないのかと?ありえないでしょう?

S:でも現実にはなってしまった。

20131009 - WSC 2013 Day4

池上:追い風が吹いたのと、天候が良すぎた。

木村:それにバッテリー消費が激しすぎて、どのみち無理な速度でした。

籾井:もう少しモータを現地でいじれるようにするべきだった。モータをばらす治具をもってなかったのは、ダメだなと思いました。

木村:せめて分解して予選用のモータとニコイチができればよかったか・・・。これは今後の課題だね。

S:某社の木村社長のように『準備が足りない』と、厳しい意見をいってみましょうか?

20131010 - WSC 2013 Day5

S:そして差が詰められないまま。最終日5日目。東海大は残り200kmながら、Nunaは50km先行。
天候は曇りから雨に。Nunaがゴールした後、本降りの雨の中発電せず。後方からは、Twenteとスタンフォード大が迫りつつありました。

木村:ポートオーガスタまでは晴れていたので、危なかったですね。

福田:Twenteは、スタンフォード大との接戦でバッテリーは使い切っていたけど、天候が良くなれば追いつけるかもしれないと思っていたと言っていました。

木村:危なかった。実際は天候が雨のままで。追いつかれずに済んだ。

佐川:最後、セルの電圧がばらついてしまった。

木村:おそらくは我々が製作したバッテリーケースの剛性不足で、スポット溶接が内部で剥がれたのかもしれない。バッテリーを使い込んでく中で、ばらつきが顕著になってきて、最終日の雲が厚く全く発電しない雨の中では、大事をとって車を止めなくてはならなくなった。

S:雨上がりのゴール地点で、Twenteのメンバにおめでとうと言ったら
『コンセントレータ無しでは、Tokaiが1位で僕たちは2位だね!』
と、言われました。

 

■WSC他チームについて

木村:4輪になったのに、Nunaのレース平均速度は、前回2011年よりも速くなってしまった。天候は良かったとは言え、やはりトータルの発電量が増えたので、このスピードだったかな。

池上:コンセントレータの件は、やつらレギュレーションに何か盛り込んだか?
トップチームとしてあるまじき行為という点は、だんだん腹立ってくるな。
彼らは大会本部よりもソーラーカーに詳しいトップチームなのだから、レギュレーションに問題があるのならば、それを言わなければならない立場なのに、裏をかくようなことをしてきた。

S:でも、2回2位になったNunaは、だいぶ追い込まれていたのでは? 
なりふり構わず勝たないとならない状況で、あのような行動をとったのかと。車体についてNunaと東海大を比較すると、Nunaはサスペンション構造を含めて全般的に、カタマラン型に最適化した新設計となっていましたが、東海大は従来の形状を継承した構造での非対称形状をとっていましたよね。

池上:Nunaスタイルっぽい構造も構想としてはあったけど、それをやるためにはサスペンションはすべて作り直しになるので、東海大のリソース的には無理ということで、あの構成になった。そう言う点では保守的だった。

木村:東海大とNunaを比較すると、Nunaはホイールベースが短いですよ。横から見たときの投影面積がNunaは小さい。今回のように横風が強い場合、東海大の方が空力悪化の影響はけっこうあったかもしれない。

S:でも、レース中Nuna7も横風では、ふらふらしていましたよ。

木村:それは横風にあたる面積は小さくとも、ホイールベースが短いから安定性としては辛いんですよ。

池上:そう、だから4日目にNunaがパンクしたとき、少しだけ、よしと思ったけど、その直後に自分達もパンクした。

S:今年は横風本当に強かったですね。ミシガンやスウェーデン、神奈川工科大も横風に流されて、コースアウトしていましたね。

佐川:あのときは、常に戻している感じ。下手したらそのまま、スライドしているような感覚でした。

木村:佐川くんの後にドライブした伊藤くんのとき、塩湖のあたりを走行中に、明らかにスライドしているのを見ましたよ。

福田:設計上は、10m/sぐらいは計算していたのですよ。でも、実際はそんなものではなかった。

木村:ボディー下面をえぐることでの空力処理も、うちの中でもアイデアはあったがそこまで手を出せなかった。

福田:そこまでやってきた事は、素直にスゴイと思います。

20131011 - WSC 2013 Day6

木村:今回Twenteやスタンフォードのように、A(前方投影面積)が大きい車が上位に入賞したのは良かったですね。

福田:空力屋として、やってみたい形状ですが、難しいです。理論的には良くても、実際に走らせるとそうでも無いということが多い中、あの2チームはきちんとまとめてきました。

S:今回の完走組でいえば、その下は、薄型でキャノピーをセンターに配置した車両が並びましたね。

池田:2013年大会について言えば、Twenteやスタンフォードのような形状の車が上位に入ったことを含めて横風が強かったという事もある大きいんじゃないの?

福田:そうですね、確かにTwenteやスタンフォードの形状は、横風には強そうですね。

木村:初参加のスウェーデンのチームが印象に残っています。ナイフのような薄さで、びっくりしました。あれならばカンガルーもちょん切れます。

佐川:でも横風でクラッシュしましたね。

木村:あれは横風に弱そうだもの。

S:スタート地点でモータの調子が悪かったのか、モータがカクカク動いたときに、ボディーがそれに共振してカクカクとたわんでいましたよ。後ろからコロンビアチームが来ているのに、抜くに抜けず困っていました。

木村:あと工学院大は、初出場なので大変そうでした。独特な車両デザインで、ブリヂストンの新型タイヤを装着するなど、新しいことにチャレンジしいていましたが、デザインの段階でダウンフォースが出過ぎて空力的には厳しいと考えていました。プレスリリースでは、WSCはスタンフォード大やトロント大が出ている大会と書いていて、デルフト工科大は東海大は出てきません。1位や2位のチームには、もう少し敬意を払って欲しいものですね。

http://www.kogakuin.ac.jp/press_release/2013/cbr7au00000278vy-att/20131018.pdf

池上:一般的に名前が通っている有名校を並べただけですよ。

木村:そして、途中でトラック輸送しているのにプレスリリースでは、完走したことになっていた。

http://www.kogakuin.ac.jp/press_release/2013/cbr7au000002793l-att/101502.pdf

S:完走には自力での平均速度もそれなりに求められますが、完走出来ない場合の、トラック搬送のルールもけっこう厳しいですね。仮にトラックで搬送するにしても、トラックがそれなりのスピードで走らないと、コントロールストップの閉鎖に間に合わない。

20131012 - WSC 2013 Day7

木村:平均速度で65km/hぐらいで走らないと完走できない。

池上:どのタイミングで、トラックに乗せるかは難しそう。

福田:他の先生に話を聞いたら、工学院大の広報は、宣伝のためには何をやって良いと言う感じで、広報が勝手に書いてしまうらしいですよ。

S:東海大はやらないのですか?

福田:東海大は大学新聞の編集長自らがオーストラリアに同行して取材して、様々なところで確認を取りながら報道していますので逆です。

S:今回は東海大は、レース後の記者会見無しですか?

木村:記者会見は2位だからやらないと早々に決まりました。

池上:記者会見をやらないのは、まだよしとして、スポンサー様にはちゃんと結果レポートをまとめて、報告をしてください。

木村:年内ぐらいを目標に報告すると言うことになっていたけど、どうなったんだろう?

S:もう新年ですよ、監督。

池田:チーム沖縄に負けてしまいますよ。

池上:その点では、完全に負けていますね。

S:今大会出完走は10台で、2011年よりも完走の台数は増えていますね。

木村:天候が良かったからじゃ無いかな。

S:ケンブリッジは、残念でしたね。

木村:練習走行で、自分達のサポートカーに接触して横転で、スタートできずにリタイヤになってしまいましたね。面白いチャレンジだったので、どこまで走れるか注目はしていたのですが。ああいう突然変異のチャレンジは、好きです。
今年は、オランダ勢が躍進でしたね。チャレンジャークラスで1位と3位、クルーザークラスでも優勝。

S:次回、レギュレーションはどうなるのでしょうか?

木村:集光をどこまで認めるかだね。少なくとも今回のような集光は、NGでしょうね。

池上:表現方法のアイデアを考えて、大会側に提案してあげないとダメですね。

福田:トップチームでレギュレーションを含めて、話し合う機会は無いのですか?

木村:今のところ公式な場は無いですね。

池上:大会本部でも、今回のレギュレーションの問題を理解しているのは数人ですね。
他の人は、集光器はNunaがやったのだから、東海大もやれば良かったのに程度しか思っていないですよ。

木村:そうですね、技術的に理解しているのは、電気/電池担当のジョン・ストーレーと、デビット・ランドぐらいじゃないかな。あの集光器がOKならば、今は禁止されているアドオンミラーやアドオンレンズも、集光式太陽電池に変形しているにすぎないと言い張ればOKになりかねない。



ZDP編集長。

S:なぜ今回の車検であれがNGにならなかったのだろう。

木村:ぱっと見て威力がわからなかったからかな。

池上:私は効かないと思っていた。

S:タラレバですが、実力があの場でわかったら抗議した?

池上:抗議していたね。

籾井:皆が大して効かなさそうだと思ったから、通ってしまったのか。

木村:Nunaは、この集光器はレギュレーション違反だから下ろせと言われれば、下ろす覚悟ではいたと思いますね。
集光器が無くなれば、良い勝負が出来たと思いますよ。
今回一番問題なのは、レギュレーションの隙を突くというか、レギュレーションの不備を逆手にとって利用している事。今回のコンセントレータは次回同じ手は使えない。本来ソーラーカーレースは、その技術を使ったら、その次もそれが使える技術革新でないと、正しく無い。今回のコンセントレータは、ソーラーカーレースの未来を目指していない。

籾井:そうは言うけど、ソーラーカーレースの技術として、コンセントレータが今後必要なものならば良いのでは?

木村:コンセントレータは必要な技術かもしれないけど、今のレギュレーションではザルすぎてダメ。歯止めがきかない。これは変えていかないとならない。


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【その他】


■WSCへの行き方

S:最近『なぜZDPの皆さんはサラリーマンなのに休みを取ってオーストラリアに行くことができるのですか?』と聞かれますが、皆さんどうですか?

福田:良い質問ですね。

佐川:社内でも良く聞かれます。

池上:それは、不良社員として・・・

S:木村さんや福田先生は、業務なわけだから比較的恵まれているのでは?

木村:それが意外に大変なんですよ。

福田:オーストラリア行っている間の講義は、2ヶ月かかって、ようやく補講で返すことができました。昨日も卒研生に『卒業論文を見てくれましたか?』ときかれましたが、補講もあって見てないと言ったら、『こいつダメだ。仕事していない』という顔でみられました。

池上:あららららら・・・。

佐川:籾井さんは、組合が強い有給消化が必須な会社なので、有給が残っていればそれを使うという名目でとれそうですよね?

籾井:未消化の有給が残っていたので大丈夫でしたが、普通に行けば『オイオイ、そんなに長期に休んで大丈夫なのか?』とは言われますね。

S: でも、有給が残っているから使えるというのは幸せですよ。一般的な日本の会社では、年度末に消えておしまいです。

池上:ホンダ系の会社は年度末大変だよね。有給残っている担当者と連絡が付かなくなることがある。ヤマハはそんなこと無い。

S: そういえば、池上さんは今回、会社の転籍と重なっていましたよね?

木村:オーストラリアから帰ってきたら会社が変わっているんだから。

池上:本当は7月に新会社が立ち上がる予定だったけど、3ヶ月延期になって10月1日になった。上長に『私10月1日は日本にいないのですけど』と言ったら『いないのか、しょうがないな』と言われた。

木村:引っ越しはどうしたの?

池上:ヤマハの席を全部キレイに片付けて『ではさようなら〜』と、そのままオーストラリアに出発しました。

籾井:すげーなー

池上:で、オーストラリアからの便は、朝成田につきますが、その日の夕方に犬山の不動産屋に行って、新居の部屋の鍵を受け取りました。部屋のドアを開けると照明も何も無くて真っ暗だったので、近所のホームセンターで作業灯を一個買ってきました。

木村:オーストラリア帰りだから、懐中電灯はあったでしょうに。

S:オーストラリアへ行くことは、社内的には認知されていたのですか?

福田:新しい職場的にも大丈夫でしたか?

池上:ええ、がんばってくださいと送り出してもらいました。

S:佐川くんは、同じ会社にお勤めの方からも、なぜあいつは休めるのか、といわれたりしていましたが?

佐川:池上さんのように周りの認知も無いので、一年ぐらい前からこの時期行きますとアピールをしています。

木村:今回も休ませて頂けるよう、私が一筆書いたけど。

佐川:あっ、ごめんなさい。今年はそれ出さなかった。あまり効かないかなーと思って。上司は良い人なので、行かせてくれなかったら会社辞めますぐらいの感じで。

池上:すげえ。

S:それぐらいやりますよ。周りには、こいつをオーストラリアに行かせなかったらどうかなりそうだと、あきらめて頂かないと。私も上司に恵まれていて、ロータスエリーゼに乗っているくらい車好きな方なのですが、ある日事業部長とその上司と私含めて飲んでいる席で、事業部長に二人でオーストラリアに行っても良いですかと聞いてくれました。さすがに二人はダメといわれましたが、それは織り込み済みで、ならば一人ならば良いということに、話をつけて頂きました。

池上:ふっかけておいて、値切るみたいな感じですね。

S:本人もあわよくば行けたらと思いながらも、おまえだけは行かせてやる、と。

佐川:うちの以前の上司は、ラリーに関わっていた人だったので、良かったのですが、今の上司は厳しくて、やはり行かないと辞めるぐらいの雰囲気を出しながら、頑張りました。

S:日本の会社でそれぐらいやるか、有給取得を強制するくらいの会社で無いと、厳しいですよ。

木村:あとは私のように、出張という名の有給休暇よりもひどい状況で行くか?

S:木村さんは、出張扱いですか?

木村:だって、出張以外に授業を休む方法無いのだから。僕に有給は無いから。

福田:出張なので日当は出ますが、土日の振替も無く、着いた次の日からきちんと授業しないと怒られます。

木村:出張なのに大学に帰ると、休んだ分早く授業取り返してくださいって、言われるんですよ。

福田:私はオーストラリアから帰ってきた次の週から取り返す為、水曜日は1限から6限まで実験でした。

木村:そんなことをしていると、学生からの授業評価がどんどん悪くなる。

福田:私も、学生に色々と苦情を言われました。

木村:ある意味、有給ですぱっと休める方が良いです。

 

■WSC2013テレビ放映の件

http://www.tv-asahi.co.jp/solarcar/
http://www.tvu.co.jp/program/2014_solar_car/

木村:東海大学のWSC2013の挑戦が、ドキュメンタリーとして、テレビ朝日系列24局ネットにて1月19日(日)午後2時から3時半まで、放映されます。

佐川:番組では僕がスピンした事が負けた原因となってしまうという噂を聞いていますが、そのように放映されてしまうと、次回の大会に参加できるかどうかに響きますよ。

木村:原因のひとつであるのは間違いない事だし、今回は佐川くんには犠牲になってもらった方が、みんなに分かりやすいでしょう。 次回参加の際には、
『僕の不名誉を次回の大会で挽回させてください!そうでないと、僕は一生スピンの男と言われ続けてしまいます!』
と、情に訴えかけて説得するようにしてください。

池上:番組のサブタイトルは、二回まわった男?

福田:この時期アブダビに出かけないといけないので、私はDIGAを買いました。

木村:僕も失敗は許されないので念には念を入れて、2台のDIGAでダブル予約をします。

 

■アブダビ大会

S:アブダビでソーラーカーのレースが開催されるかもしれないと噂を聞きましたが。

木村:2014年の11月か2015年の1月に開催できるように、努力しているようです。

福田:1月後半に、現地から何か発表があるかもしれません。

 

■タイのエコランカー

S:タイはFacebookで向こうのエコランチームの車体を見ていると、最近レベルが高いですよ。KMITL(モンクット王ラカバン工科大学)卒業生でもあるWittさんのチームは、ホイールがカーボンです。写真で見る限りでは、車体も日本のチームと比べてかなり遜色なくなってきていますよ。

木村:カーボンは開繊使っていますね。この車体形状は、BIZONに影響を受けているのかな。

池田:Wittさんのところは、特電ユーザです。

木村:タイのKMITLは東海大学の提携校ということもあり、昨年ソーラーカーを寄贈しました。最近、工学部でソーラーカーを始めるとか言い出しているらしいです。もし、アドバイザーの要請が来たら、池上さんも行きますか?

池上:タイは食べ物がおいしそうだし、いいですね。

木村:KMITLが、ソーラーカーを本気でやるのならばWittさんを呼び戻した方がいいよ、教えてあげた方がいいかもね。

 

■アフリカとNuna

S:Nunaが今年のアフリカのレースに参加するメンバを公募していましたよ。履歴書を受け付けていました。

佐川:じゃあ、出してみますか。

池上:まずいな。

木村:集光器はダメだよと言っておかないと。でも、南アフリカを走り慣れている我々には若干アドバンテージはあるかな。

S:Nunaといえば、Nuna4のレプリカがオランダのオークションサイトで販売されていましたよ。誰か買わないかな?

木村:東海大の2011年モデルにはパナソニックさんが作ったレプリカがありますが、こちらは非売品です。

 

■トミカ

S:昨年Tokai Challengerがトミカのミニカーとして発売されましたが、今年はこれも4輪になったりしますか?

木村:いや、ならないですよ。まだ1年もたっていないのに。

佐川:売れているんですかね?

木村:相変わらず売れているみたいですよ。今Amazon.co.jpで欠品しているくらいですから。

池上:私の手元には大量に在庫あるから、売りますよ。

S: ステッカーの貼りにくさからして、全く子ども向けじゃないですね。
これのためにピンセット買いましたよ。

木村:オレはピンセットに加えて老眼鏡も無いとステッカー貼れない。

S:ミニカーになってよくわかりましたが、3輪は安定性が悪いですよね。良く私の机の上でも、Tokai Challengerが、何かに押されて傾いたままになっていますよ。

池田:地球上に、三本足の生き物はいないからね。

 

■チーム悪い人はどうなった?

池田:昨年の木村さんの指摘をうけて、Orange Wary Techになりました。
『オレンヂ色の油断のない技術をもったチーム』ということで、かけています。

S:WEM秋田・袖ヶ浦や鈴鹿Ene-1に出ていましたが、特にEne-1の結果はさんざんだったようですね。

木村:さんざんな結果のチームは、どのような名前でも良いのですが、やはり上位を目指すチームは、ちゃんとした名前にして欲しいですね。Panasonicさんだって、スポンサーするのは大変なのですから。あまり変なチーム名だと、広報として名前を表に出せなくなるわけですよ。NHKのニュースで耐えられる名前にしてもらいたいですね。

S: 今度の名前は、大丈夫ですか?

木村:悪い=>Waryですか・・・、微妙なところだね。

池田:もう少しほめてあげても・・・。一応ひねってあるでしょ?

木村:まあ二流チームとしてならば、良い(よい)。でも、この名前だと意味が分かりにくいので、上位は未だ無理かな。

池田:木村さん、ひどい! 良くない(悪い)です。

 

■教員

S:池上さんは、いつ東海大の教員になるのですか?

池上:そのネタはけっこう危険ですよ(笑)。会社の人が本気にしますので。

木村:そう思われた方が、休みも取りやすいのでは?

 

■ZDP掲載の写真利用について

S:最近お問い合わせが多いのですが、本サイト(Picasaを含む)に掲載されている写真の利用について、被写体にさせて頂いている方や、好き好んでこの記事を読まれるような方が、自分達の活動をPRするために自分達のWebサイトや報告書、Facebook等のSNSに使用する事は、歓迎します。その際、使用した旨をご連絡頂けると幸いです。商業利用については、個別にご相談ください。

http://www.irc-tire.com/ja/bc/products/others/

 

■東郷神社の威力

籾井:実は僕という共通点もありますが。

佐川:実は僕もなんですが・・・。

木村:おお!WEMもWSCも2013年は2位だった。とはいっても、東郷神社をもってしても、連覇は難しいという事じゃないかな。そういえば、私の所に神田明神からダイレクトメールがきまして・・・

S:どういうつながりですか?うちの神社で結婚式を挙げてくださいとういうお誘いですか?

木村:いえ、大学電気工学教育研究集会で神田神社(神田明神)権宮司の清水祥彦さんに、特別講演をお願いした事がありまして、そのつながりで、ぜひ新年は参拝くださいと、初詣のお誘いでした。なので、今年は皆で神田明神の特別参拝に行きましょう。

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今年も、よろしくお願い致します。(ZDP一同)

追記(2014/1/3):初詣に行ってきました。

東郷神社
神田明神


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