2023 Bridgestone World Solar Challenge (ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ)が開催された。ブリヂストンが冠スポンサーとなって10周年となる今年の大会は、例年2年毎に開催となる前回2021年が新型コロナウイルス (COVID-19)の影響でキャンセルとなった為、4年ぶりの開催となった。
競技車両は2019年からのレギュレーション変更により、太陽電池セルはシリコン系4平米となり、3輪での設計が許された為、新設計の多くのチームは3輪のモノハル型となった。
競技は2023年10月22日にダーウィンをスタート。オーストラリアを縦断するスチュアートハイウェイを3022km走破し、トップチームは5日後の10月27日にアデレードへ到着した。
優勝はベルギー:Innoptus Solar Team/Infiniteで、序盤キャサリンまでにトップに立つとそのままレースをリード。大きなトラブルも無く後続のペースを見ながらレースをコントロールし、平均速度88.2km/hの記録で2019年に続いて連覇。
2位はオランダ: Solar Team Twente/RED X。前回はカタマラン型のショートホイールベースの車体で大会4日目にコースアウトしてのリタイヤとなったが、今年のレースでは初日こそ出走順もあり出遅れたものの、二日目には二位のポジションに浮上。その後トップに僅差で迫るがInfiniteには届かず、2位でのフィニッシュとなった。
オランダ:Brunel Solar Team/Nuna12は、上位勢では唯一のカタマラン型。2019年では優勝を目の前に大会五日目に車体を燃やしリタイヤとなったが、今回は無事完走し3位。
米ミシガン大/Astrumは、スタート前日の動的車検でタイムが残せず、初日は最後尾スタートとなったが、2日目の17時には4位まで順位を上げ、そのままゴールとなった。
日本から参加の東海大学/Tokai Challengerは、初日のスタートでトラブルで出遅れ、4日目にはリアサスペンション部がモノコックから剥離する大トラブルにも見舞われるが、2時間の修理でレースに復帰し、3000kmを5位で走り切ることができた。
オランダ:Top Dutch Solar Racing/Green Thunderは、今回注目のペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池を搭載した。しかし、大会直前の走行で強風でアッパーカウルを飛ばしセルの20%を損傷したが、それでも6位のでゴールとなった。
大会5日目の朝まで5位のポジションを走行していた独:Team Sonnenwagen Aachen/Covestro Adelieは、ポートオーガスタからアドレードの最終区間で横転しコースアウト。そのままリタイヤ。
日本から参加の工学院大学/Kogaは、序盤から発電に問題があり、他チームにトラッカーを譲り受ける等補修を続けてレースを続け、スウェーデンのJU Solar Teamに次いで8位で完走。
日本勢では他に呉港高校と和歌山大学が出走していたが、途中のコントロールポイント閉鎖や競技終了時刻に間に合わず完走扱いにはならなかった。呉港高校は、ゴールまで僅か36kmでのストップだった。
2023 Bridgestone World Solar Challenge Challenger Class 最終結果(完走分)
順位
Car.No.
チーム名
国籍
車名
到着時刻
平均速度
[km/h]
1
8
Innoptus Solar Team
Belgium
Infinite
Oct 26 10:44:41
88.2
2
21
Solar Team Twente
Netherlands
RED X
Oct 26 11:04:58
87.4
3
3
Brunel Solar Team
Netherlands
Nuna 12
Oct 26 13:02:07
82.7
4
2
Univeristy of Michigan
USA
Astrum
Oct 26 14:37:05
79.3
5
10
Tokai University
Japan
Tokai Challenger:
Oct 26 16:58:53
74.6
6
6
Top Dutch Solar Racing
Netherlands
Green Thunder
Oct 27 8:56:17
72.9
7
46
JU Solar Team
Sweden
Axelight
Oct 27 13:51:28
65.2
8
88
Kogakuin University Solar Team
Japan
Koga
Oct 27 14:04:00
64.9
9
15
Western Sydney Solar Team
Australia
Unlimited 5.0
Oct 27 14:12:06
64.7
10
92
Eclipse ÉTS
Canada
Eclipse XI
Oct 27 14:33:59
64.2
11
20
Durham University Solar Car
United Kingdom
DUSC2023
Oct 27 15:34:11
62.9
12
85
αCentauri
Switzerland
Aletsch
Oct 27 16:43:38
61.4
今回上位勢では、1-2-4位がSunpower社の未だ市販されていない第7世代セルMaxeon 7 Cellが使用されていた。同社によると、従来の同社製品よりもセル単体で1%程度変換効率が高いとのこと。
また正式に採用を発表したのはTopDuchだけだったペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池だが、Nunaが搭載した太陽電池メーカーのMeyerBurger社やミシガン大の車体にロゴマークのあった米FirstSolar社は、TopDuchが採用したOxfordPV社と同様のタンデムセルの技術を有しており、今回搭載していなくとも、次回以降ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池を採用してくる可能性は高い。
上位4チームが搭載したバッテリーは、正極材にシリコンを採用した高エネルギー密度の米Amprius社のリチウム・イオン電池で、ドローンや航空機向けに採用されているもの。同社のプレスリリースによると、従来型のリチウムイオン電池と比較して、容量が30%以上(ZDP調べでは約50%)向上していたとのこと。
モータについても、上位チームは独自開発のコアレスや正弦波駆動等さらなる効率追求への痕跡が見られた。空力面でも、Infiniteのフィン(スタビライザ)や、タイヤ開口部の処理等、アイデアを具体化し、走行性能向上を目指していた。
日本勢も新技術の情報収集を続け開発の手を止めずに、さらなる工夫で、より上位を目指してもらいたい。
最新の結果は、大会公式サイト 参照。
BWSCの次回開催は、2年後の2025年の予定。(s)
関連リンク:
2023 Bridgestone World Solar Challenge (ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ)
https://www.bridgestone.co.jp/bwsc/
World Solar Challenge 2023(大会公式サイト)
https://worldsolarchallenge.org/
Innoptus Solar Team | Infinite
https://www.solarteam.be/en/cars/infinite
「23 Tokai Challenger」諸元表
https://www.u-tokai.ac.jp/campus-life/challenge/wsc-2023/challenger/
Energy Live News -British solar cell innovation to power zero carbon race car
https://www.energylivenews.com/2023/10/11/british-solar-cell-innovation-to-power-zero-carbon-race-car/
Perovskite on silicon tandem solar cell technology | Oxford PV
https://www.oxfordpv.com/perovskite-silicon-tandem-cell
ISFH
https://isfh.de/
Sunpower
https://www.sunpower.com/
First Solar
https://www.firstsolar.com/
Meyer Burger
https://www.meyerburger.com/
MITO SOLAR
https://mitosolar.com/
https://www.instagram.com/mito.solar/
Meyer Burger ramps up German solar panel production ...
https://www.eenewseurope.com/en/meyer-burger-ramps-up-german-solar-panel-production/
Amprius Powered Top Four Solar Cars in Prestigious World Solar Challenge | Business Wire
https://www.businesswire.com/news/home/20231030953933/en/Amprius-Powered-Top-Four-Solar-Cars-in-Prestigious-World-Solar-Challenge
高エネルギー密度バッテリーの米国Ampriusが始動:シリコンアノードを開発(1/2 ページ) - EE Times Japan
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2306/13/news044.html
工学院大学ソーラーチーム、豪大陸3000キロ縦断達成 クラス8位でゴール - 八王子経済新聞
https://hachioji.keizai.biz/headline/3687/
東海大、27日午前にオーストラリア縦断ゴールへ ソーラーカーで3000キロ - サンスポ
https://www.sanspo.com/article/20231026-QTSSWQ64YFL33OS5Z2STTEQSHQ/
豪縦断レース、東海大5位 ソーラーカー3000キロ走破:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/286269
【現地独占取材】太陽光の力だけで3000km極限レース ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ2023徹底レポート
https://youtu.be/XcT_bynx-zs?si=wHmkrHIr0q5y1cFc
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