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鈴鹿2012 車検レポート 2012/08/04 8:00

やぁ、みんな元気かい?

2012 Solar Car Race Suzukaのピットには、いろんなアイデアが詰め込まれたソーラーカーが集まっています。今回も例年通り、キムヒデ的に気になったものを集めてみました。良いものもそうで無いものもありますが、がんばって紹介していきましょう!!


 

まず、最初に気になったものは「ソーラーカーチーム篠塚」。ラリードライバーの篠塚建次郎氏がドライバーを務めるチームであり2012年に発足しました。本拠地は静岡で出場回数は4回目とあり、メンバー構成から推測すると静岡ソーラーカークラブが母体となっていると考えてよいでしょう。車体は「ELA」が使用されており、SunPower製の太陽電池セルに置き換えたものです。メインスポンサーは同社のセルを使用したモジュールを販売している「東芝」であり、同社には特設サイトも存在しています。
http://www.toshiba.co.jp/sis/h-solar/shinozuka/index_j.htm
 タイヤは横浜ゴムが開発したソーラーカー専用タイヤで、1.5mm以上の溝を設けていることから、World Solar Challengeのレギュレーションにも対応できることを目指したものであるといえます。横浜ゴムは、1996年にWSCに参戦したグループの三菱マテリアルチームのために、ソーラーカー用18インチタイヤを製作した実績がありますが、それ以来の登場となります。性能等は未知数ですが、ダンロップやブリヂストンのタイヤを超える性能を目指していると予想されます。


 

芦屋大学ソーラーカープロジェクトです。2012年大会はSky Ace TIGAのAチーム、Sky Ace VのBチームがドリームクラスに。Sky Ace QUADのBチームはオリンピアクラスにエントリーしてきました。そんなに人数がいないチームなのに、三台もエントリーしてきて大丈夫なの? 2011年大会で優勝したSky Ace TIGAは、Aチームという本命に位置し、熟成が進んでいることから従来の延長線上で仕上げられている。これに対して、BチームはELAが性能を上げて来ることを察知し、高性能なトリプルジャンクション化合物太陽電池を用意してきました。ソーラーカー業界向けに部品をカスタム生産する野村商会のモジューリングにより、変換効率は27%となっている。オリンピアクラスでの連覇を意地にかけても達成しようと考えているに違いないです。
一方、CチームのSky Ace Vは2011 WSCに出場した車体であり、鈴鹿サーキットには最適化されていない。こちらは、芦屋大学OBを主体としたメンバー構成とし、Aチームのバックアップとして表彰台を狙っています。計測&表示システムは東海大学のTokai Challengerのシステムを移植。これは、南アフリカのSouth African Solar Challengeで、ドライバーとして協力してくれる三瀬剛氏への見返りとも受け取れます。なお、トルコのFormula-G大会で見かけた野村商会のアルミホイールは、無事にトルコチームが完走した実績も上げたことから、Sky Ace Vに装着されていました。しかしながら、Sky Ace Vはコーナーでインリフトし、コース外にはみ出た際にフロントサスペンションのアッパーアームとアップライトの間にあるロッドエンドにダメージが入ったのか、その後、サスペンションを破損させてしまったと思われます。


 

次は、呉港高等学校エコテックが登場させたオリンピアクラスの新型車。CFRP一体焼きが大好きな山田修司先生の技術やセンスを感じさせる仕上がりとなっています。CFRP一体焼きの効果もあり車体重量は、リチウムイオンバッテリ込みで130kgという軽量に仕上がっているそうです。しかし、ドライバーの操縦ミスか初期トラブルが発生したのかは不明ですが、フリー走行中にシケインでコースアウトしたためか、フロントスパッツにダメージが入ったという情報もあります。車体のデザインコンセプトは、風が抜けやすいロア形状ということで、空力が悪化しやすいオリンピアクラスの欠点を補おうとしているようです。


 

宮崎工業高校は、今年は鉛バッテリからリチウムイオンバッテリに種類を変更。これにより約60kgの軽量化を達成しました。登坂やコーナリング速度が上がることが期待され、転がり抵抗も低減されることから、記録向上が期待できます。リチウムイオン電池のセルはパナソニックのNCR18650Aであり、有限会社大吾屋がバッテリマネジメントシステム(BMS)を製作したそうです。このBMSには、リニアテクノロジー社のモジュールが使用されていたように見えました。
JTEKTは、アップライトの長さを増して、車高を100mm上げることでフロア下の空気の流れを改善し、空力改善を試みると言っていました。これは、フロア下が狭いため、底面に流れ込んだ空気の流速が上がることでダウンフォースが出るのをキャンセルしたいという思いから発案したそうです。しかし、レーシングカーにとって重心位置のアップは、安定性やコーナリング性能に悪影響を及ぼすため、大変リスクの高い挑戦となっています。また、前方投影面積も増加し、スパッツ長も長くなったため、空力的にも改善されるかどうかは微妙であると考えます。ボディ上側にあったキャノピーの高さはその分(100mm程度)下げることができるため、空気抵抗が減る要素も無くはないのですが・・・。なんとなくですが技術的には難しそうなので、結果がどのようになるか注目したいところ。なんだか「赤い彗星」をイメージさせるキャノピーの雰囲気は、一部の層に好感が持たれそうな気もします。


 

オリンピアクラスで表彰台を目指すチームが気になるチームとして筆頭に上げるのは金沢工業大学夢考房です。なめらかな形状のボディはCFRP製となっています。ソーラーカーとしては珍しいフロント2輪に自作DDモータを搭載するFFレイアウトを選択。多少の変更を加えれば、2013 WSCを目指せそうにも思えました。


 

チャレンジクラスの方も見てみましょう。と思ったら、昨年優勝したTeam MAXSPEEDのピットは、車検会場から最も離れた位置にあるので、移動するのも大変です。いつもうるさいので(=にぎやかななので)、端っこに追いやられたという噂もありましたが、ピット前にはタイヤ交換用のエアーツールのためのタワーが立っていました。これが邪魔だったのかもしれません。今年は、エアージャッキを新作し、タイヤ交換のスピードを上げるそうです。ちょうどその時、トルコのFormula-G大会で優勝したイスタンブール大学のSOCRATのメンバーが大挙して鈴鹿サーキットにやってきました。英語でタイヤ交換は何分でできる?という質問に2分と答えていました。
 そのMAXSPEEDの打倒を目指すのは、武蔵工業大学OBチームの柏会。今回は、なんと超小型MPPT(最大電力点追従回路)を開発してきました。PVモジュールに1枚に1個のMPPTを付けることを目的に、1系統あたり52gの昇圧型MPPTが開発されました。サイズも90×40×20mmと超小型。となると気になるのは変換効率ですが、最大効率98%以上(昇圧比1.14のとき)というスペックを表示していました。また、昇圧比が1.1倍以下のときにはスルーモードとなり、影などになった場合には理想ダイオードモードになるそうである。型番はKW-MPPTで、販売価格は現在調整中とのこと。モジュール1枚単位でMPPTを使用した場合、浪越エレクトロニクスが販売するPVコレクターと同様な効果が得られると開発者は語っていた。ただし、MPPT出力の積み数は大きくなっており4段5段くらいにはなっているようである。なお、HALクラブはセンサレスのブラシレスDCモータコントローラを開発して搭載していました。Team SUNLAKEはGT-R用の鉛バッテリを採用し、8直列から9直列に搭載することで、速度アップしたセッティングに変更していました。


 

西脇工業高校は、地道な改良を続けています。2010年には、池上さんからロアーアームが曲がっていることが良くないと指摘されていました。http://www.zdp.co.jp/2010/2010suzuka7.html
今回は、これを理想的なストレート形状に改善してきました。エントラントの杉田哲哉氏は「リアスパッツも思い切って細くしてみました」と空力の改善もアピール。「池上さん、今回は来てくれないなぁ。またぜひ指導してください。」とのこと。


 

暑い、暑すぎる!! 夏の鈴鹿サーキットは、いつも暑い。と思ったら、さらに拍車をかけているものを発見。大阪府立堺工科高校ソーラーカー部のピットでは、バッテリの放電中。8直のバッテリに蓄えられているエネルギーを、なんと電気ストーブで放電中。確かに、電気ストーブの電気ヒータは安い大型抵抗器であり、12Vのバッテリは8直にすれば96Vなので、電力的には交流100Vの電気ヒータであれば、使えなくは無いです。ただし、直流電圧は、普通の交流用に作られたスイッチでは、開閉に無理があるため、途中に直流対応のサーキットブレーカーを入れておいた方が良いでしょう。(このチームは対応できていました。)さらに、エントラントの筒井貴広氏は声が大きく、どちらかと言えば暑苦しいタイプ。もとい、熱血タイプ。なんと、高校1年の息子さんである、筒井雄大君もチームに入ってきてしまったそうです。ミツバのDDモータも買ったので、しばらく(=10年くらい)はチームを抜けられないことになりそうとのこと。


 

JAGつくばソーラーカーチームは、茨城県立つくば工科高等学校のOBチーム。昨年の池上レポートでも取り上げられています。
http://www.zdp.co.jp/2011/2011suzuka4.html
前回から、リアサスペンションの構造を変え、左右がリンクされていたものを切り離し、独立懸架に変更しました。リンクが無くなったことより、空力的な向上も期待されるようです。また、オリジナルの可変界磁機構も見せてもらいました。エントラントの池田信太郎氏によれば、今年は6位入賞を目指したいと抱負を語っていました。


 

そんな中で、虎視眈々と上位を狙っているのはパンダサンチームの細川信明氏。今年は、平塚工科高等学校のようなエコノムーブ型を進化させたような形状を採用してきました。「去年のボディをカットして新車を作っちゃったよ。これでも、465Wはあるよ。」と自信ありげな表情を見せていました。
 「撮らないでっ!!」と太陽電池モジュールが貼られていないソーラーカーを隠そうとするのは、和歌山大学ソーラーカープロジェクト。和歌山大学クリエイトセンター(クリエ)のプロジェクトです。金環日食のときには、キムヒデは和歌山大学に行ったんだけど、そのときにはお世話になりました。


 

立命館大学EV-Racingは新型マシンを製作してきました。よく見ると、池上敦哉氏が設計した「えこっくる江東」のフレームや足回りに共通しているところが見受けられます。うまく吸収できたかな? エントラントの仲井肇さんは、完走を目指したいと語っていました。
ロッキー& SAT’Sのソーラーカーは、発電的にはかなりつらいボディ形状。1モジュール内にある太陽電池セルの角度差が付き過ぎているため、前縁部の発電効率はかなり落ちてしまうと予想されます。空力性能を重視した結果だとは思いますが、電気屋としてはちょっと残念です。


 

香川高専ソーラーカーTEAMは、再輝のような角形パイプによるラダーフレームを採用した4輪のソーラーカー。今回はテレメトリーシステムを開発していました。説明をしてくれた萱原淳一氏は、レーシングカー製作などで有名な童夢カーボンマジック社に入社予定。Tokai Challengerでもお世話になった会社です。今後もよろしくお願いします。
さらに、自慢の鉛バッテリを見せてくれたのは、うーん、どこだったか・・・。たぶん、西脇工業高校だったです。新神戸電機のHV28-12Aは、エネルギーが多めになるとのこと。実力を発揮できるのか?


ここでは、紹介しきれなかったけれど、神奈川工科大学はスマートフォンを使用した、GPS、電圧、電流などを計測するシステムを開発しているなど、面白い取り組みがいっぱいでした。それでは、最後に和歌山大学のマスコットキャラの「わだにゃん」がコックピットに座っている姿で癒やされましょう。それでは、みなさんがんばってください!!(k)
http://www.wakayama-u.ac.jp/mascot/


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