はじめに
2011年の鈴鹿サーキットでは2011 Ene-1 GP(エネ・ワン・グランプリ)が初めて開催されることとなった。このEne-1は、「モビリティ」「エネルギー」「挑戦」をテーマに、走行中の排気ガスがなく、省エネルギー性能に優れた電気自動車のパフォーマンス競うものである。大きく分けて、単三形充電式電池40本を使用して走行する「KV-40」と、市販乗用車のエンジンをモータに置き換えたコンバートEVなどを対象とする「EVパフォーマンスチャレンジ」の2種類がある。ここでは、安価に製作できそうなKV-40について、技術的に解説する。
KV-40のクラス分けと競技ルール
単三形の充電式電池40本を使用して走行する電気自動車の大会=KV-40である。このKV-40には、充電器式電池のみを使用し車体重量が35kg以上のKV-3クラス、乾電池のみで最低重量制限がないKV-2クラス、そしてKV-2に加え電気二重層キャパシタを使うことができるKV-1の3クラスに分かれている。
KV-1クラス |
KV-2クラス |
KV-3クラス |
車両重量制限無し |
車両重量制限無し |
車両重量35kg以上 |
キャパシタ搭載可 |
キャパシタ搭載なし |
キャパシタ搭載なし |
部門分けなし |
a 高等学校部門
b 大学、高専、専門学校
c 一般 |
a 高等学校部門
b 大学、高専、専門学校
c 一般 |
KV-40では、鈴鹿サーキットのフルコースを2回走行しそのタイムを競う。その間に充電することは禁じられている。このルールは、「きついアップダウンが存在する鈴鹿サーキットを多くは走れない」、「電池の放電時間を少しでも長く確保する」という発想で決められたものだと推測する。
KV-40で使用する充電式電池
レギュレーションにより、Panasonic社製EVOLTA(充電式単三形)を使用することが義務づけられている。故意に加熱することは禁じられている。
写真はパナソニック・プレスリリースより
どのくらいのパワーが得られるか
充電式EVOLTAの単三形は最小容量1,950mAh(プレスリリース時には2000mAhという表記もあり)であり、およそ電圧1.2Vで2Ahの容量があると考えられるので、1本当たり2.4Whのエネルギーを蓄えることができる。これが40本使えるので96Whのエネルギーを蓄えることができる。100W電球であれば約1時間弱を点灯できるだけのエネルギーとなる。厳密にいうと、JIS C8708 で規定された測定方法であるので、この値は20℃で5時間の放電時間としたときに取り出せる放電エネルギーであるので、96Whよりも放電エネルギーは小さくなる。KV-40では、鈴鹿サーキットのフルコースを2回走行しそのタイムを競うルールである。実際には確認していないが1本あたりで5〜6Aの放電電流で、平均電圧1.1Vで20分くらいの放電時間となるではないだろうか? この場合、1本あたり約6W×40本で240W程度の電力を使用することができるはずだ。これ以上になると電池の発熱の影響を考える必要が出てくるであろう。
どのくらいの速度が出せるか
鈴鹿サーキットのコースデータによると上り勾配はダンロップコーナー付近で最大7.8%とある。登坂抵抗(勾配抵抗)はm×g×sinθ(N)なので、ドライバー込みで車体総重量80kgの車体がこの坂を登るとすると、約60N程度となる。仮に、240W /60N =4m/sであるので、最も急な上り坂では14.4km/h程度の速度が出せることになる。平地や下り坂で速度を増せば、平均速度はもっと速くできるであろう。
KV-1の場合
以上の考察は、KV-2を想定しているが、キャパシタを搭載できるKV-1の場合には、電池のエネルギーをキャパシタで蓄えることで、より大きなパワーを取り出すことができるようになる。仮に80Whが使えたとして、1周あたりで40Whが使えることになる。6分で1周するとすれば、平均400Wが使えることになり、電気エコランカーとしては相当に大きなパワーが与えられることになる。その結果、100km/h程度かそれ以上のスピードに達することもあると想像できる。実際にゼッケンNo.2の「四十雀」チームは100km/h程度のピーク速度に達したそうである。
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