Zero to Darwin Project
NEWS
ZDP SHOP
パーツ販売
Wiki
BBS/LINK/EVENT
メーリングリスト
SOLAR-PAL
ZDPの歴史

 BackNumber〜2010鈴鹿7  

鈴鹿2010 ZDPチーフエンジニア池上の「今年の注目ポイント」

2010/08/01 08:00

昨年はTokai Challengerの設計製作に手一杯で、鈴鹿はお休みをしましたが、ZDP池上が、今年もエンジニア的視点から注目ポイントをピックアップしてみました。


■ブレーキマスターシリンダー

 

オートバイ用の後輪用マスターシリンダーで前輪の2個のブレーキキャリパーを作動させようとすると、もともとが1個のキャリパーを作動させるための仕様なので、送油量(送り出すブレーキオイルの量)が不足気味になり、特にパッドにスプリングに仕込んでパッドの戻り量を多くする改造をしてある場合には、ポンピングブレーキをしないとブレーキが十分に効かない場合があります。
対策としては、ダブルディスクに対応している中型クラス以上の前輪用マスターシリンダーを使う方法がありますが、もともと手で操作するものをフットブレーキで使おうとすると、レイアウト上難しい面があります。お勧めの対策はピストンストロークの大きいレーシングカート用のマスターシリンダーを使う方法です。左はNo26堺市立堺高等学校のSCIENCE710の例でヤマハ製レーシングカート用、部品番号:7YA-2583V-00(価格1.5万円程度)を使用しています。
右はNo121西脇工業高校のNTH2010例でインテルピッド製のマスターシリンダー(http://www.intrepid-japan.com/、価格2万円程度)を使用しています。

  Nuon Solar Team、Nuna5の例で、マスターシリンダーを2個使って送油量を確保しています。シーソー式のバランサーでブレーキの片効きを防止しています。ただし、ちょっと気になるのはリザーブタンクの位置です。正しくはエアが抜けるようにホース出口は上に向けてタンク位置はさらにその上方に設置するのですが、ホース出口は横を向き、タンク位置はマスターシリンダより下に設置されています。ブレーキパッドの消耗がなく、エアを噛むことがなければリザーブタンクは無くても大丈夫なので、1レースごとにメンテナンスをする前提であれば、実際問題は無いのでしょう。

■アルミ溶接のメリットと諸注意
 

左はNo66熊本大学工学部のアップライトで、アルミ角パイプの溶接構造で製作されています。アップライトはサスペンションの取り付け点、ブレーキキャリパの取り付け点の精度を確保するために、アルミの削り出しで製作されることが多いですが、軽量にするためには肉抜き加工に手間がかかります。軽量構造の基本は、外形をなるべく大きく取って断面性能を確保しつつ薄肉化することですので、角パイプを上手に使うことで軽く、強い構造を比較的安価に製作することができます。たとえば35mm角アルミブロックを削って板厚8mmのコの字を作るより、肉厚3mmの40mm角パイプの方が剛性強度は20%増しでなおかつ40%の軽量化が可能です。
ただし、もし溶接に欠陥があって走行中にアップライトが破損すると自分がリタイヤするだけではなく他車を巻き込んだ事故になる可能性もありますので、最新の注意をもって製作してください。また、使用するアルミの材質も注意してください。
チャレンジクラスやエンジョイクラス上位のフレームは、マウンテンバイクやオートバイのアルミフレームに使われるアルミ溶接構造用のA7N01という材質を使っています。これは溶接しても強度低下がありませんが、No66の車体はアルミサッシ等に使われるA6063を使用していると思われます。これは溶接すると熱の影響で強度が1/3に低下しますのでその点を理解して設計してください。


■組立式アルミフレーム
 

No68愛知工科大学ソーラーカー部の車は、工場設備などに使われるいわゆる組立式アルミフレームを車体構造に使用しています。軽く強くを考えるとベストな方法ではありませんが、形を作ってみて不具合があれば、途中で設計変更も容易にできるメリットがあります。この方式でテストフレームを作っておいてベストな形が決まってからアルミ溶接フレームで軽量化しても良いですね。実は組立式アルミフレームは値段も非常に安いです。ミスミhttp://www.misumi.co.jp/やSUS(株)http://www.sus.co.jp/などで購入できます。


■初参加チームに注目
 

No56鹿児島工業高等専門学校はかわいらしい、そしてソーラーカー創世記を思い出させるちょっと懐かしい感じの車です。フレームはアルミ製できれいな溶接で製作されていました。ただ材質が6063なのはちょっと強度的に心配な面があります。ハンドルは合板をレーザー加工機で切り抜いた円形ですが、ハンドル操作力は透明な樹脂板でロッドエンドへ伝達されています。アクリルかポリカーボネイトだと思われますが、いずれにしても割れる危険性があるのでアルミ等に変更した方が良いです。散弾銃で打っても割れない衝撃に強いポリカーボネイトであっても、実はガスリン等の油脂類や洗剤が付着するとケミカルストレスクラックを生じて簡単に割れることがあるので要注意です。後輪は左右にモーターを配した2輪駆動です。シンプルに行くなら片側2輪駆動でも十分だったかもしれませんね。

 

No71Team Sun Sealsは6月の試走会ではオートバイ用アルミリムに大きく肉抜きしたアルミディスクを溶接点付けで固定したホイールを使用し、走行中に破損するトラブルに見舞われていましたが、今回は溶接長を長くし軽量孔も廃止した対策ホイールを持ち込んでいました。溶接するとひずみが出るのが気になりますが、強度の要の部分ですので、しっかりと溶接の溶け込みを取って強度を確保する必要があります。社内のクラブチームで18年目でやっと初参戦とのことですので、今後もぜひ継続して参加しながら車の改良を進めていってください。


■ベテランチームの心変わり
 

チャレンジクラスの予選ラップレコードを持つ、典型的予選蹴散らし系、決勝はまあそこそこのNo54H・A・TレーシングがEBARA ECO-TECH(左)とは方向性をガラっと変えてペットボトルを模したエコな雰囲気たっぷりのファニーな新車PET BAGUS!(右)を作ってきました。失礼ながら速そうには見えないのですが、予選ではエンジョイクラスのポールポジション、総合でも9位に着け、第一ヒートでもスタートから元気良く飛び出すあたりはドライバーさんの本性がついつい出てしまった感じでしょうか。


■圧縮挫屈に注意
 

以前から綺麗な車を作っていたNo121西脇工業高校機械工学部。OSU風の綺麗なカーボンモノコックの4輪車です。ただし、気になるのがダブルウイッシュボーンのロアアームが曲げてあることです。まっすぐのパイプに引っ張りや圧縮をかけても破損はしませんが、あらかじめ曲げてあるパイプに引張、圧縮をかけると簡単に変形します。コーナリング時にはロアアームは圧縮されますので、最悪圧縮挫屈でパイプが潰れます。今のところ壊れていないにしても要注意ですね。アップライトの取り付け点を上に移動して、ロアアームのパイプは直線にするべきです。


■トー変化に注意
  左写真の車はサスペンションアーム、タイロッドとも垂れ角が大きいため、サスペンションがストロークするとトー角が大きく変化してしまいます。この車の例では、サスベンションが沈み込むとトーイン、サスペンションが伸びるとトーアウトになります。つまり、走行中にサスペンションがストロークすると、タイヤを車体上から見た時にハの字、逆ハの字を繰り返すため、ころがり抵抗が大幅に悪化し、タイヤも激しく磨耗します。サスペンションがストロークした時にリンクの各部がどのような軌跡で運動するかを良く考えて、トー変化が出ないように対策しましょう。まずはドライバーが乗った状態でサスペンションアーム、タイロッドが水平になるように、ショックアブソーバの全長を調整しましょう。、全長の調整ができない場合は取り付け点の位置を調整します。考え方のヒントはオーム社刊「エコ電気自動車のしくみと製作」に書いてありますので、勉強してみてください。

もしソーラーカーの設計製作で疑問があれば惜しみなくアドバイスしますので、遠慮なくZDP問い合わせフォームからご相談ください。(i)


▲TOPへ戻る


Copyright © 1995-2010 Zero to Darwin Project All rights reserved.
当サイトに含まれる画像・PDF等の無断転用を禁止します。
当サイトに関するお問い合わせはこちらから。