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BackNumber〜2008鈴鹿3  

鈴鹿2008 公式車検レポート

2008/08/01 20:30

8月1日、鈴鹿サーキットの車検会場では、ソーラーカーが規定通りにできあがっているかをチェックする公式車検が行われた。今回は、車検会場で集めた耳寄りな情報を紹介することにしよう!!

OSUの逆襲
ことしの最大の注目チームは大阪産業大学OSUのソーラーカーOSU model S'である。これまで使用してきたSunPower社製の単結晶シリコン裏面電極型セルを積水樹脂がモジュール化した太陽電池を採用していたが、今回はついに「ガリ」を投入。このガリというのは、ソーラーカー業界ではガリウムヒ素太陽電池のことを指します。PVG SolutionsがモジューリングしたATGという型式のモジュールは、ガリの中でも最上級のトリプルジャンクション太陽電池セルを使用している。右写真にセルを拡大したものを示しましょう。セルの左上の部分には、セルが影に入ってもモジュール全体が発電性能を失わないように、バイパスダイオードがセルごとに挿入されているように見える。この太陽電池モジュールの搭載により、OSUはようやく芦屋大学の発電出力に追いつき(追い抜き?)、鈴鹿で互角の戦いを挑めむ「挑戦状」を手にしたことになる。

 

ことしのソーラーカーレース鈴鹿では、ドリームからエンジョイとオリンピアのすべてのクラスで、ドライバー体重差を調整するバラストの搭載が無くなった。となると、軽量なドライバーの方が有利となる。そんな状況もあってか、OSUは秘密兵器第2段として、女性ドライバーを起用することを決断した。三浦愛さんは、OSUの特待生として入学し、現在はカートレースを中心に活躍している。三浦愛 応援サイトもあるようなのでチェックしておこう。体重は約45kgということで、標準的な男性ドライバーよりも20kg程度は軽い。ドライバー込みの車両総重量が200kg程度でありので、空気抵抗以外の転がり抵抗、加速抵抗、勾配抵抗の3大抵抗のすべてを10%程度削減できることになる。また、おそらくタイヤの負担も軽減されるので、タイヤ交換を行う確率も下げることができる。OSUは「ガリ」と「愛」でひさびさの優勝を本気で目指すことになる。芦屋大学ドライバーの三瀬剛氏も気になる様子。

 

高効率モータの開発
チャレンジクラスでは、モータの特別チューンを行わないと勝負に勝てない時代に突入している。よく調査してみると、優勝をもくろむ堺市立工業高等学校科学部のScience 708はミツバのプロトタイプモータを搭載していた。このモータは外観はM2096とほぼ同等であるが、マグネット極数32極、スロット数36のマグネット:スロット比が8:9という構造になっている。このタイプのモータは、コギングが少なくスムースに回ることが知られているが、走行データを取得するために登場してきた。

一方、エンジョイクラスに出場している池田技研工業のPuelta del solは、ミツバDDモータを自分たちで改造し、芦屋大学と同様なコアの引き抜きによる可変界磁機構を実現してきた。

 

オリンピアクラスにエントリしている岡崎高等技術専門校は、コムスのモータを改造し、ディスクブレーキを設けるなどの変更を施してソーラーカーに搭載していた。

Auroraの新型車が登場
"Kimura San! Are you fine?"と言って登場したのは、オーストラリアから来たAURORA VEHCLE ASSOCIATIONの代表David Fewchuk氏。昔は寡黙なジェントルマンで、堅物で近寄りにくいという印象だったのだが、最近はかなりフレンドリーな感じになってきました。「まぁ、とにかくうちのソーラーカー見ていってよ」ということで、ピットにおじゃました。このソーラーカーは、オーストラリア大陸3000kmを走破する、World solar Challenge (WSC)の新しいチャレンジクラスのために製作されたもので、以前のものよりも幅が200mmほど狭くなっている。

 

三角形のカーボンパイプフレームを採用し、フロント1輪、リア2輪のレイアウトを踏襲している。モータも同様にAURORA/CSIROのコアレスDDモータである。WSCのチャレンジクラスでは、シートアングル規定があり27度以内となっているが、それだと前方投影面積が増大してしまう。それを解決したのがこのシート。角度を測るゲージは背骨の下の空間に入っちゃうので、これで問題ない?!そうです。

 

搭載する太陽電池はSunPowerセルの1枚もの。変換効率は20%程度となる。これだと発電量はダウン(といっても多い方だが・・・)するので、巡航速度は落ちてしまいそうである。そこのところをDavidにぶつけてみると、「いや、車体は軽くなっているし、空力も良くなっているので、とくに鈴鹿サーキットでは問題ないよ。タイヤの摩耗だって押さえられるのでDUNLOPの16インチタイヤで4時間以上(たぶん6時間)くらいはいけるよ。」とのことでした。ドライバーはエースのDerrik Rodgers氏に続き、Paula Elstrek氏が担当する予定。Paula Elstrek氏は女性ドライバーとして、2000年に575km/hの自動車による最高スピード記録を樹立したそうです。この2人のドライバーで鈴鹿を攻略します。

 

その他いろいろ
今回の驚きは、いろいろです。まず、沖縄県豊見城市立長嶺中学校工学部ソーラーカープロジェクト(長いチーム名なので、以下長嶺中学校とします。)のメンバーを紹介しましょう。メカニックは中学生なんですよ!! さすがにドライバーはできないので、卒業生の兼元彬嘉くんと仲間楓さんが運転するそうです。とはいっても、高校1年と2年とのこと。間違いなく最年少チームと言えるでしょう。

 

得たいの知れない物体が登場!! エンジョイクラスに初出場する神奈川県立平塚工科高校社会部の平工社会部プロトタイプは、通常のソーラーカーとは異なる設計思想でボディが作られていました。実は同校は秋田県大潟村ソーラースポーツラインで行われたワールド・ソーラー・バイシクル・ラリー(World Solar Bicycle Rallye)の中で、ミニソーラーカー的性格をもつカテゴリーSのジュニアクラス常勝チームなのです。そこで使われるソーラーバイシクルを、そのままスケールアップしたのが今回のソーラーカーだ。(写真提供:WSBR大会本部)

タイヤが外部に出るタイプのソーラーカーが多い中で、このソーラーカーは車体内部に格納する方式となっている。しかも、前方投影面積の増大は少なく、むしろ少ないくらいである。低重心化を進めることで、狭いトレッド幅でもコーナリング性能を維持しようとしている。ただし、今回の「バラストなし」ルールへの変更によって、コーナリング性能は落ちてしまうとのこと。日本ケミコン製のキャパシタを回生ブレーキ時に使用するなど、意欲的な作品になっている。

 

「ちょっと、これを見ていってよ」ということで、紹介されたのは、ドリームクラスエントリーのアステカ・レーシングチームの氏。自作のアルミ鋳造ホイールを披露してくれました。熱処理してあるので、強いですよ。AC4Cというタイプのアルミ鋳物です。「型さえできてしまえば量産は簡単なので、いずれ市販化も検討したいね」と語っていました。

以上、絶え間ない挑戦が続けられ、2008 Dream Cupソーラーカーレース鈴鹿を迎えることになりました。本戦は意地とプライドをかけて、相当に熱い戦いになりそうな予感です。(k)

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