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鈴鹿2008 オリンピアクラスのソーラーカー

2008/08/01 18:30

2008年の鈴鹿の夏が来た。今年のソーラーカーレース鈴鹿の最大の変更点は、なんといってもオリンピアクラス(FIA OLYMPIA CLASS)が新設されたことでしょう。年々性能を上げてきたソーラーカーの安全性を向上させ、近い将来に一般道を走行できるようなものにしたいという趣旨で、今回からこのオリンピアクラスが制定されました。

オリンピアクラスの主な特徴をまとめると、

  1. 4輪でなければならない。(従来は3輪でもOK)
  2. 全長×全幅×全高=4m×1.8m×1.6m以内。(従来は全長×全幅=5m×1.8mなので、1m短い)
  3. 太陽電池の面積は、6m2以内。(セル面積で考えて良い)
  4. 鉛蓄電池62.5kg、リチウムイオン&リチウムイオンポリマー電池15kgという、若干少なめの電池容量。(従来は鉛蓄電池80kg、リチウムイオン系17kg)
  5. FIA公認競技用シートを装着しなくてはならない。(従来は指定無し)

しかし、レギュレーションの詳細が公表されて間もない大会であるということもあり、今回は5台の新車が登場するに留まった。そのため形状の傾向もバラバラで、トレンドというものがない状況にある。レーシングソーラーカー創世記の車体を見る感もある、世界初登場のオリンピアクラス全車を紹介しよう。

001:長野県工科短期大学校 Fizzer 20J

 

いち早くオリンピアクラス対応を目指していた長野県工科短期大学校は、長年培ってきたFizzerシリーズの後輪を外に出した4輪構造のFizzer 20Jを登場させた。ボディの前方投影面積は一見するとあまり増えていないように見える。ミツバ製特別仕様モータ(低速タイプに変更)であるM5048D-Nをフロントホイールに2機搭載するというレイアウトを採用している。同チームは3輪時代にもFFモータを採用していたが、その方が消費エネルギーが少なくなったというデータを元に、4輪化してもFFとしたようです。同チームの工藤善正氏によると、「性能ダウンは必至で周回数的には60周くらいが当面の目標になるのではないか」と予想していました。レギュレーションの5.1.14損傷の危険の減少より、「ソーラーパネルを囲むボディーワークには、半径30mm未満の鋭利な縁があってはならない。」という規定により、ソーラーパネルの厚さは、60mmに達している。工藤氏によれば、「レギュレーション解釈には幅があり、どの程度配慮すればよいのかわからないとのこと。」ボディ中央付近のふくらみは、FIA公認シートのショルダー部分の出っ張りを格納するため。サイドミラーも100cm2以上が必要なため大型化している。バッテリは古河電池の鉛蓄電池FPX12380を使用。

002:神奈川工科大学 Horus

 

車名のホルスはエジプト神話に出てくる天空の太陽の神。ハヤブサあるいはハヤブサの頭を持つ人の姿であわされた。ちなみに「太陽の王子 ホルスの大冒険」というアニメ作品は1968年に放映されたそうです。そんなことはさておき形状的には流線形のフロアをもつ、かつての太陽虫を発展させた形。4輪で低重心化できることから、狭めのトレッドでもコーナリング性能確保できると考えられる。落としどころとしては、かなり的を射ていると思われる。FIAシートのショルダー部分は太陽電池を搭載しているアッパー内に格納している。モータはミツバM1096を2機使用。Fizzer 20Jよりもモータのパワー&速度が高くなるので、PWMを絞る局面も発生するかも。このあたりの損失が気になるところだ。一方、バッテリはリチウムイオンを確保。軽量化に貢献している。もしかすると、本大会のオリンピアクラスでは最もバランスがいい車体かもしれない。

003:SAT'T First(静岡工科自動車大学校) NEXT ZONE

NEXT ZONEのボディはスズキのワンメイクフォーミュラーカーレース用の車体を流用している。そのため、ドライバー抜きで427kgという巨漢となってしまった。走行会でもかなり苦戦している模様であり、鈴鹿の勾配を登り切れない可能性もある。良くも悪くも安全性に関してはダントツの性能を誇ってしまうことになるのだが、明らかにオーバースペックとなっている。ドライバー込みで500kg級になるため、ドリームやチャレンジクラスのソーラーカーとの速度差が大きくなり、他のソーラーカーのドライバーへの心理的負担は大きくなっている。タイヤもecoタイヤなどに拘っているような感じはなかったので、移動シケインもどきになりそうな予感。

004:静岡ソーラーカークラブ FAL

 

静岡ソーラーカークラブは、東海大学付属工業高校→現東海大学付属翔洋高等学校の山田修司先生およびその卒業生を中心としたチーム。部材の大半は中古部品で構成され、外皮には、他のソーラーカーのアッパーが部分的に流用されている。「とにかく軽く」という山田修司氏の方針により、バッテリを搭載した状態での重量は136kgと、上記のNEXT ZONEの3分の1となっている。軽量化のために、カーボン製パーツを多用し、とくにフロントアップライトの製作には力が入っている。さらに、ENAX製リチウムイオン電池モジュールを搭載することで総重量を抑える。モータはミツバのM1596を左リア後輪に1機装着している。最大の特徴は、右側フロント&リアタイヤの間にコックピットを持ってきたことで、タイヤスパッツと一体化させることで大きなコックピットが発生する空力的なデメリットを軽減しようとしている。空母型レイアウトと呼ぶことにしよう。

005:岡崎高等技術専門校 宙

実は2回目の出場だそうだが、昨年はリタイヤしてコース上を走っていないため、事実上、今回が初出場となる。アルミ+鉄フレームにアルミ外皮ということで、リサイクルしやすいボディ材質が売り。タイヤはソーラーカー用タイヤではなく、一般車用のものなので、転がり抵抗は通常の2倍程度になるのではないかと予想される。そのため、上位進出は難しものと考えます。

総評
初めてのオリンピアクラスということもあり、各チームとも異なるアプローチで大会に臨んでいる。中には方向性が迷走しているものもあるが、クラスが成立する5台のソーラーカーがレースに間に合い登場できたことは評価できる。たしかに、安全性は全体的には向上したと思われるが、明らかに車体の省エネルギー性能が低下しているという副作用も発生しているようだ。ドリームやチャレンジクラスとの走行速度に、どの程度の差が生じるのか、明日の第1ヒートではっきりすることだろう。しかし、この初挑戦の結果を反映して、今後、より洗練された車体が開発されることで、その差は徐々に縮まっていくものと期待されている。

今回のオリンピアクラスの結果を予想すると、Horus、Fizzerが有力であり、ダークホースとしてFALが挙げられる。この3台で優勝が争われると見て間違いないだろう。(k)

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