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キムヒデの2005 World Econo Move Chiba in NATSレポート |
2005/10/22 22:00 |
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WEMGP戦としては初の開催
省エネ研究会はこれまでガソリンエコランから電気エコランまで、単独のレースとして省エネカーレースや製作講習会を開催してきた。それが、2005年からはWEM GP戦の一つとして開催されるようになった。大会会場となるのは千葉県香取郡大栄町にあるニホン・オートモービル・カレッジが所有する一周約1100mのNATSサーキット。まず、ニホン・オートモービル・カレッジのご厚意により提供されたNATSサーキットの空撮写真を見てみよう。また、大会WEBサイトにある標高マップも合わせて示すことにする。
WEMC in NATSの特徴
4mの標高差で4%の勾配がある
このコースの最大の特徴と言えるのは、最低点から280m先にある4mちょっとの丘だ。写真の左下の部分に盛り上がった丘があるのがわかるかな? 前回のWEM GP第4戦の会場となった菅生サーキットは70mの標高差で10%の勾配があるので、たった4mで4%と言えばそれまでなのですが、これがかなりの曲者です。(なお、WEMC in NATSは上空から見て時計回りに走行します。逆回りになるようです。)
バッテリ2個で2時間走る
4%の勾配が曲者となるのは、本大会がWEM GP戦史上もっとも使える電力が少ないという条件から来ています。大会からイコールコンディションのバッテリーとして支給されるのは、おなじみの古河電池のFT-4L BSが2個。これで2時間を走れというのだから大変だ。12V-3Ahの電池が2個で、定格(5時間率)で72Whしかない。これを2時間で使うとなると、平均して36Wしか消費できない。これじゃぁ、平均したら40Wの電球以下ですよ!! お先真っ暗です。菅生大会は2時間でFPX1275(12V-7.5Ah)を4個使えるので360Whのエネルギーがあり、平均180Wの電力が使えるのでだいぶ違います。とにかくきついのは、レース終盤になってバッテリがへたってくると、この坂を上るのが大変苦しくなります。普段よりも多めに残す感じでないと最後まで走りきれません。
ドライバー体重は55kg
秋田大会が70kg、白浜大会が60kgなどという統一されたドライバー体重制限であるのに対し、WEMC in NATSではJIS規格にある55kgをドライバー体重としている。さすがに平均的な日本人男性には厳しいルールであるが、いちおうもっともな理由でもある。なお、菅生は最初からドライバー体重制限無し。一方、豊田、幸田は、車体とドライバーの合計で制限するなど、大会ごとに考え方が変わってきている。また、ドライバーが汗をかいた場合の体重の自然減を許容する大会と、そうでない大会が混在している。WEMC in NATSは、自然減を認めない方針であるので、あらかじめレース後のドライバー体重減少を見込んだウエイト調整をしておくことが必要である。これから、この大会に出場することを考えているチームは、この点に留意しておく必要があるでしょう。本大会は上位チームを中心に再車検を行っていたが、東海大は予選で750g下回ったため本戦は最後尾スタートとなった。
コーナーはきついが何とかなるか?
4mの坂を下るだけで電気自動車エコランカーは速度を上げていきます。最高点を過ぎて下ったところにあるコーナー(写真左の池の右上付近)が厳しそうだと予想していました。ここで転ける車も多かったとか? バラストも多くは積めないため、はらはらしていましたが、350mmのトレッドのファラデーマジック2でも問題なく曲がることができました。ドライバーがうまいのかもしれませんが、ここは案ずるよりも産むが易し? なお、坂の上から転がって下っていくときにモータとバッテリが直結されていると、自然に回生ブレーキがかかってしまいます。それを嫌う場合には、前回の優勝車のThe 4th Laboratoryの呑龍のように、フリーホイールハブを装着するなどの対策が有効になりそうです。また、スイッチでモータとバッテリを切り離すこともできますが、この場合はチェーンでの駆動ロスが大きくなるので覚悟が必要です。
会場でのバッテリの充電&加温は可
バッテリは自己放電があり、また加温した方が取り出せる放電エネルギーが増加する。このように充電方法を工夫することなどでも放電エネルギーが変化する。そのため、参加者としては可能であれば補充電や加温が行いたくなる。その結果、ZDPでは澁谷さんという電気化学分野のスペシャリストが活躍する場が与えられた。EVエコラン界では機械屋、電気屋に加え、新たに化学屋がレースに登場することになったのである。このようなバッテリへの充電を認めるかどうかの点については、環境(ガソリン消費・騒音など)面への配慮から、発動機発電機による充電を禁じる大会もあり、また、バッテリの使用技術差をあえて認めないなど大会ごとに見解が分かれる点である。本大会ではバッテリの充電と加温は認められていました。
トランスポンダは車体前方外側に設置
空力をとことん追求すると、トランスポンダを車外に取り付けるだけでも、空気抵抗の増加が気になります。本大会のトランスポンダは小型なものだったので、それほど気になりません。豊田大会くらいにトランスポンダが大きさになると、車体サイズに対して無視できなくなってきます。
でも雨対策も重要に・・・
レース当日は、雨が降ったりやんだりでコースが濡れたコンディションになりました。各チームとも雨対策で大変そうです。左はミツバのTesla 800。Hyper USO 800の14インチ仕様のタイヤカバーを、こんなところに活用。柳原さん曰く、もうHyperは14インチには戻りませんとのこと。右は豊橋創造大T-WorksのしんがたMUGENくんのドライバー「さとえり」の窓ふきタオル。廊下の掃除にも応用できそうです。しかも、掃除後の足でキックされるのはつらいなぁ・・・。
その他の気になったもの
ユニークなアイデアで、業界では有名になりつつあるものつくり大学の侍。5月のエコノムーブでは正座姿勢がユニークでしたが、今回はタイヤにアイデアをつぎ込みました。ゴムタイヤはヒステリシスロスが転がり抵抗になるので、いっそのこと無くしてしまえ!! 予選では薄いゴムが付いていましたが、本戦では左の写真のようにアルミ+木の車輪となりました。当然、乗り心地は最悪。そういえば、前にもこんなチャレンジがあったなぁ・・・。たしか、GoHan号はTGMYの14インチタイヤが登場する前(2002年くらいだったかな?)に、小さい車輪による空気抵抗を低減し、似たようなコンセプトで空気無しのタイヤを装着していました。たいへんうるさい音を立てて走っていたのを思い出します。タイヤの歴史に逆行する大胆な挑戦でした。
一方、右側の車体は骨格はコンパネ、カウルはプラダンというホームセンターで売っている材料のみで作れそうな車体でした。しかも駆動輪はフロントタイヤにあり、FFです。FFというコンセプトの車体は少ないので、面白いかもしれませんね。いちおうシャフト周りなどは金属パーツで補強されていました。
次は、ソーラーカー業界にいる人向けのネタです。アルミ合金の板材はサスを兼ね、ハンドルは前後に動くスティック型。フレームはアルミ角パイプ製で、リベット留め。モータは洗濯機モータ改。というと、再輝系のにおいがプンプンしますが、熱狂的なファンか、ただの偶然のようです?!
レース前の予想
レース前に今回の最有力候補を予想してみました。最有力候補は、NATSサーキットで2度の試走を行っていたスーパーエナジーのグリフォン。菅生戦法や通常走行などを実際に試していました。DDモータのコア半抜きで下り坂を下ることで、転がる性能(モータの鉄損低減分)が良さそうでした。
また、ミツバのHyper USO800も有力でした。なんと言ってもこのコースを走った経験があり、さらに平均速度25km/hの速度域にマッチした空力性能である可能性が高いことが挙げられます。実際には、Teslaが来たのでしたが、もし走っていたらどうなったのか気になるところです。そういえば、来年に登場する新型車が、モーターショーに出品されているとか?
当然、first step AISIN AWのつばさ52号も東海大のファラデーマジック2も優勝争いに絡んでくるだろうとは予想していましたが、つばさ52号は豊田、菅生に続いてNATSで3連覇してくるとは・・・。まさに「今や飛ぶ鳥を落とす勢いです。」
レースの勝敗を実際に分けたもの
平均消費電力36Wという超過酷なエコランレースでしたが、ギヤドライブの優位である可能性が高いような印象です。一方、ファラデーマジック2はチェーンドライブでしたが、平均的なモータ電流が少ないということからモータ回転数は高くなり、おそらくチェーンによるロスは通常のレースと同等以上になっていたと考えられます。一方、DDモータは体格が大きいためドライバー体重55kgというレギュレーションでは、重量のハンディーキャップを抱えるのかもしれません。今回のNATSでのレースは、この辺のバランスがギヤドライブに向いていたのかもしれませんね。ただし、GRIFFONの成績から言って、IRCの14インチタイヤのレベルは相当実力が上がってきている感じもします。平地での走行になった場合にはかなり戦闘力が上がりそうな気配です。さて、いよいよ白浜のレースまであと1週間となりました。いったいどうなることやら・・・。(k)
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