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はじめに
2004 WEMの結果を受けて・・・ 走行距離を2000m伸ばせ!!、まずは空力を改善せよ
細かい理屈は、合っているかも分からないレベルなのだが、とくにかく今回は効くかも?と思われたものは、できるだけ採用することにしたのである。このタイヤカバーが効くかどうかのヒントというか、動機になったのはミツバの元祖USO800。かつては1999 & 2000 WEMで二連覇し。オープンホイール型対フルカウル型の戦いで、最後の最後まで戦い抜いた名車である。なんと言っても、2003 & 2004 WEMの燃料電池部門でも優勝している実績をもつ。フルカウル型に対してオープンホイール型で互角に戦うには、ただのオープンホイール型には無い機能があるのではないだろうか? そもそもオープンホイールといってもホイールにはカバーが付いているではないか。そこで、USO800のような丸いタイヤカバーは、内部に回転する空気の流れを閉じこめることができ、空力的にメリットがあるのではないかと考えた。期待したような効果が得られなくても、少なくとも雨対策やホコリ対策にもなるので、もちろんGo!!です。という経緯で、ホイールカバーを製作することにした。この方式は、フルカウル型では難しいドライバーの視界を確保しながら、タイヤをカバーできるので安全面やドライバー負担軽減にもメリットが大きい。
たった30mmの地上高のファラデーマジック2であるが、エコノ亀吉2.5号のようにボディの下に指一本すら入らないエコノムーバーも存在する。そこで、たった15mmの高さのタイヤスパッツを全ての車輪に装着することにした。特にフロントはステアリング操作とともに動く、可動スパッツとなっている。ソーラーカーの世界ではホンダドリームやOSU model Sなどで採用されているシステムであるが、これをエコランの世界に持ち込むことにした。スパッツは回転するタイヤ回りの乱流を抑えることが大きな目的であるが、我々の場合は車体の開口部の面積を最小にすることを大きな狙いとしている。実際の製作を担当したのは藤田くんと井谷くん。2人とも静岡県立吉原工業高校自動車研究部や和歌山県立和歌山工業高校機械工作クラブというように高校時代からエコラン界で育った強者たちである。
このタイヤカバー&スパッツの効果を検証するために、今年も大会翌日に大潟村ソーラースポーツラインにおいて実際に走行テストを行った。下は巡航時の消費電力でプロットが巡航時の平均消費電力である。ここで、白丸と塗りつぶしのプロットがあるが、それぞれ往路と復路に対応している。また、赤がカバーとスパッツ無し、青が有りとなっている。まだ、現時点では校正などの処理が不十分であるが、なんとなく青いプロットの方が消費電力が少なそうに思える。仮に、赤線から青線のように消費電力が変化したとすると、Cd値的には-5%の低減効果があったことになる。空気抵抗が走行抵抗に占める割合は約半分であるので、全体としては2.5%程度の消費電力低減が行えた可能性があるかも。もう少し実験や検討を加える必要はあると思うのですが、信じるものは救われる? 加速時のモータ効率を改善せよ 昨年まで使用していた2003年型特殊電装アモルファスコアDCブラシレスモータスペシャル仕様(うーん、長い)は、特電秋田用モータがベースとなっている。ピーク効率は高く、大きな電流が流れた場合にも、なかなかの効率を叩き出していた。しかしその後、特電筑波用(強力型)モータをベースとした、コアが大型化された市販アモルファス特電が販売されてしまい、スペシャル比べてもほとんど特性が変わらない状況にあった。そこで、なんとかスペシャルの意地を見せるために改めて再検討を加えることにした。その結果、やっぱり職人技の手巻きでがんばることで、より大きなパワーに対応できるような変更を目指した。手巻きを担当したのは、前作でも巻き線を担当したきっくうこと菊田くん。期待通りに巻き終えてくれました。セッティングとしては巡航時よりも大電流側の効率を重視した。もちろん、その代償として無負荷電流は増えるなど低負荷時の変換効率は低下していますが、加速時の特性は改善されました。 さらにコントローラには、日本インター社のショットキーバリアダイオード(SBD)FCH30A06(耐圧60V耐電流30A)をモータコントローラのハイサイド側に入れ、フリーホイールダイオードの電流を負担させ、PWM使用時の損失を少しでも減らすようにした。(図中の青色で示したダイオード)。SBDはリーク電流が若干多めだが、順方向電流が流れたときの電圧ドロップが少なめで、順方向から逆方向に電圧が変化した際の逆回復時間は短いことが特徴である。SBDにもいくつかの分類があるが、我々はSBDとしては低リークなものを採用してみた。また、アルミ電解コンデンサは低インピーダンスなことで有名な日本ケミコン製KZEシリーズに変更し、高周波成分への対応能力を稼ぐためにフイルムコンデンサDTD-Zシリーズを追加した。平滑用の電気二重層キャパシタをやめた分も、アルミ電解コンデンサのKWシリーズで補っている。 回生制動で蓄えたエネルギーをどこで使うかであるが、今回は加速初期から加速完了までの間、電池に上乗せすることにした。つまりバッテリ電流は一緒でも、モータに投入されるエネルギーを増やすことにした。これにより、PWMによる損失は若干増えてしまうものの、バッテリの負担を増やさずに加速を鋭くすることが可能となる。 回生エネルギーを増やせ!!
回生ブレーキを使用する際に遅角ポジションに切り替えると、当社比約2倍程度以上の回生電力が得られ回生エネルギーも増加した。1回あたりの回生エネルギーは0.8Wh以上であり、12回使用することで約10Whのエネルギーを稼ぎだすことになる。10/144Whは全エネルギーの約7%に相当する。従来はこの半分しか回生ブレーキで稼げていなかったので、昨年比で3.5%程度使用可能なエネルギーが増えたと考えられる。実際に、昨年は加速の一部に上乗せを使うだけで、回生でためたエネルギーが無くなってしまったが、今回は加速時間の全てに上乗せを行っても回生の際に蓄えたエネルギーを消費することができなかった。実際の走行では、巡航中の一部でも上乗せを使用してキャパシタ電圧の電圧が上がりすぎないようにした。今回、この回生&上乗せ加速に使用されたのは、日本ケミコン社の電気二重層キャパシタDLCAPの2.5V-1000F仕様。これまで使用していたキャパシタよりもさらなる低インピーダンス化が進められている。昨年と同様に、4直の10Vと2直2並の5Vの切り替えを行うことで制動力の切り替えを行っている。また、遅角と進角を切り替えることでも制動力を変えられる。今回、遅角ポジションによって多くの回生エネルギー得られるようになったことで、回生ブレーキの効きも向上し、結果的にハンドブレーキの使用量が減ったことも記録向上に貢献していると思われる。 14周達成のためのペース配分は「内田理論」 バッテリの仕上がりも過去最高!?
ということで、持ち込んだ秘密兵器はほぼ予定通りに動いたこともあり、好記録に結びついたようです。走行が終えた直後のインタビューで、「すごい記録が出たわけですが、来年はこの記録を越えることが目標になるのでしょうか?」という質問には、正直参りました・・・。やっと新記録を出したばかりなのに・・・。でも、来年も記録更新を目指してがんばりましょう。最後に、今回の記録達成に協力していただいたみなさま、そしてライバルとして切磋琢磨してきた仲間たちに感謝します。(k) |
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