|
|||||||||||
|
2003年のソーラーカー&電気エコラン大会の最後を締めくくる、2003 World Electric Vehicle Challenge in SUGOが宮城県村田町にあるスポーツランド菅生で行われた。このコースは、70mの標高差がある山岳コースであり、他のコースとはひと味もふた味も違うテクニックが必要となる。2002年は、電気二重層キャパシタへバッテリから一定電流チャージを行った走法でスーパーでんちくん強力が優勝したが、今年はヨイショット!ミツバのHyper USO800が優勝した。この菅生の大会の裏側には、いったいどんなことがあったのか?探ってみよう。 2003菅生の大きな変更点
キャパシタ見本市??
他にもパワーシステム製やPanasonic製の電気二重層キャパシタを搭載しているチームもありました。どこも、ありったけ積んでいるという感じですごい量です。
その他の対策としてユニークだったのは、東北大学齋藤研究室のSpace Surfer IV。ホンダのDDW4060の上にドーンとフライホイールが得意げに乗っています。そして、周囲には、カネボウ製のキャパシタが搭載されているようです。右側の写真はコックピットのメータ類を撮ったものですが、BATT、CAPという電圧計に加えてFWという電圧計がついていますね。おそらく、フライホイールからは発電機を経由して電力を取り出せる構造のようです。動かしてみてとリクエストしましたが、うるさくて近所迷惑になるので、遠慮しておくとのことでした。
杜のシンポジウム
各チームの戦略 そこで、スーパーでんちくんにフロントディスクブレーキを新たに装着して、馬の背進入時の安全性を高めた。また、キャパシタ搭載量を、昨年の60V-32.5Fから64.8V-41.7Fに増量し、馬の背への進入速度を少しでも遅くすることにした。一方、ミツバDDモーターの方は日本ケミコン&岩手エレクトロニクス製アモルファスコアに置き換えたバージョンアップ品。さらにミツバの内山さんが、永久磁石を1週間削り続けて調整した一品もの。変換効率はさらに高まり、運転条件にもよるが96%に達している。タイヤの方は、ソーラーカー用ミシュランラジアルでは荷重が少ないこともあり、グリップ力が不足したため、現場でIRC製のものに変更した。その結果、レース中には成り行き回生だけで馬の背への進入ができるようになった。残念ながら、今回はキャパシタ電圧(キャパシタダムの水位)の低下への対応が遅れ、レース途中でペースを大きく落としてしまった。この辺の失敗が無ければ、もう少し上を狙えただろう。
一方、チーム籾井には、東海大ファラデー・マジックのドライバー菊田くんが昨年に引き続き乗車。菅生でなんとか、ミツバさんを阻止してGP戦の年間チャンピオンを狙いたいところ。籾井君は、昨年製作したアモルファスDDモーターを、異例に早く仕上げてきた。さらに、馬の背での通過速度を上げるために、フロントタイヤにキャンバーを付け、トレッド幅を広げるとともに、リアタイヤの取り付け高さを変更して、ローダウン仕様に変えてきた。昨年のレース後の走行テストでは、製作した自作DDモーターを使用して問題なく走行できていたので、今年は万全の態勢かと思われていたが、登坂時に電流を異常に消費してしまうというトラブルが発生。おそらく、ホールセンサーにコイルからの漏れ磁束が入り、ローターマグネットからの磁界と干渉を起こしてしまったことが原因ではないか?と思われる。今年こそ、優勝争いに絡んでくるものと思われたが、レース途中で無念のリタイヤとなってしまった。
次に、ホンダエンジニアリングEVERのOrcaを見てきましょう。16インチ小径タイヤにDDモーターを搭載していますね。キャパシタも相当積み込んでいるようです。そのためかドライバー込みの体重量は100kgを超えていました。DC-DCコンバーターを搭載しているので、概ねバッテリーからの定電流放電を実施しているものと予想されます。このコンバーターはソーラーバイシクルで使用していたMPPTをベースに改造したもののようだ。
ヨイショット!ミツバはどんな感じでしょうか? んっ!! なんと14インチタイヤ&ホイールにDDモーターを搭載しているではないですか!! しかもコア材はアモルファスらしい。どうやら秋田用と筑波用のコアをさらに合わせて菅生用を製作してきたようだ。気合いが入ってます。タイヤ径が小さくなることで、モーター自身の発生トルクを少なくすることができ、その結果、モーターの大きさを小さくできる。ということで、最終的にはモーター重量を低減することができる。でんちくんのモーターは高効率化しているとはいえ、エコラン用としては重くなっているので、登坂抵抗の大きい菅生に対してはミツバの戦略は有利に働くだろう。これで、ドライバーの体重差(海ちゃんvs齋藤さん)はだいぶ埋められてしまった。さらに走る高性能勘ピュータである齋藤さんのドライビング術もあり、今回の優勝にたどり着いたと思われる。
最後に、登場していただくのはfirst step AISIN AWのつばさ52号。今回は様子見という前振りでの登場だったが、実車をみるとしっかりと対応してきたようだ。その結果がこれで、特殊電装の筑波用モーターを3機搭載してきた。特殊電装賞があったら差し上げたいくらいですね。しかも、FPX1275の低インピーダンス特性を利用して、キャパシタではなく、バッテリーで成り行きの回生電流をしっかりと受け止めていた。そして、通常モーター&キャパシタ無しで19周という大記録を打ち立てた。恐るべし。この成果は、来年以降、菅生に初めてチャレンジするチームにとって、大いに参考となるだろう。似たような発想の例として、村田高校も2機のモーターを搭載して、登坂能力を高めてきたようだ。
モーターの数で勝負となると、思い起こせば紀北工業高がありました。OSUの藤田先生のお褒めにあずかった?!というマクソンモーター5連の「誉(ほまれ)」で、ぜひ来年は菅生にチャレンジしていただきたいと思います。 ということで、ヨイショット!ミツバのHyper USO800は見事に菅生での勝利を勝ち取った。2位には最後のブースト(キャパシタ上乗せ?)でモーターコントローラが破損し、停車してしまったホンダエンジニアリングEVERのOrca。3位にはなかよしZDPのスーパーでんちくん強力が同一周回数までがんばったもののOrcaに惜しくも届かなかった。一方、最終戦を迎えたWEM GPの総合結果は、1位ヨイショット!ミツバ、2位東海大学木村研究室、3位チームうにゃにゃん亀吉となった。来年はもっと熱い戦いが待っている!?
ということで、今シーズンもなんとかレポートを続けてきましたが、今年こそZDP座談会を復活させて、この1年間を総括したいと思うのでした。でも、集まるとすぐに宴会になっちゃいそうなので、やっぱり無理かもなぁ・・・。 |
|||||||
当サイトに関するお問い合わせはこちらから。 Copyright(c)1995-2003 Zero to Darwin Project All rights reserved. |