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キムヒデの2003白浜レポート 2003/11/10 18:00

やぁ、みんな元気かい? 7th EV ENJOY TRIAL in 白浜が2003年10月24日に南紀白浜空港旧滑走路上で今年も行われました。ちょっと遅くなったけど、ここ白浜では、信じられない出来事がありましたので、レポートしましょう!!

第1ヒートのタイムトライアル
白浜名物といえば、ル・マン方式のスタートでタイムを競うタイムトライアル。ここでの記録が、第2ヒートのグリッドポジションを決める。ドライバーは30mをダッシュして、ピットクルーのサポートのもとでエコランカーのピットに乗り込み、ピットクルーが車体を押し出しながらスロットを開いてスタートする。日頃の運動不足がたたってか、池上さんは体がでんちくんに追いつけない?! チームうにゃにゃん亀吉のドライバー白沢実紀さんもダッシュしたら足がつってしまったとか?

 

 

けっきょく、ミラクルでんちくんは古河電池のFPX1250を3直にした36V仕様で無難に第1ヒートを終え、2分20秒の記録で11位につける。第2ヒートがあるのであまり無理はしなかったようだ。ミラクルでんちくんをはじめとして特殊電装系のチームは、コントローラ部の耐電圧の兼ね合いから36V、しかもFPX1250を3直でレースにのぞんだところが多かったようである。考えることはみんな一緒なんですね。第1ヒートに燃えていたのは名城大学Nova。1分44秒というタイムは、昨年のヨイショット!ミツバが記録した1分31秒にはおよばなかったものの、2位以下を大きく引き離してトップとなった。確認はしていませんが、第1ヒート専用の大型モーターを使用したのではないかと推測されます。

白浜の攻略ポイント
白浜のコースは、強い向かい風と追い風が各チームを苦しめているが、それとともにコース中央部にある3mのへこみが、なんともいえない中途半端さを与えている。バッテリーのみ(一定電圧)で走行したとすると、下り坂ではわずかではあるが、なんと回生制動が起きてしまう。下りでは消費電力が減る一方で、登りでは消費電力が増えてしまう。1時間しかない競技時間なので、ただでさえ高い放電率で苦労するのに、さらに追い打ちをかけられるようだ。下のグラフは無風状態のものであるが、これに風が加わるとどのように対処すればよいのかますます分からなくなってくる。

次に、浪越エレクトロニクスのモーターコントローラなどを使って一定電流をモーターに流した場合、速度が27〜40km/h程度の範囲で大きく変化してしまうことがわかる。速度変化が大きいと高速時の空気抵抗による損失が大きくなり、なかなか距離を伸ばすことができない。また、コントローラを経由することで損失も若干増えてしまう。2002年にスーパーでんちくんが菅生で採用した定電流+キャパシタ充電走行を行っても記録が伸びないようだ。

ということで、いろいろな戦法を考えてみたのだが、どれも一長一短であり、白浜には何ともいえない走りにくさがあるわけだ。ミラクルでんちくんやファラデー・マジックは進角機能があるため、下り坂では進角を使うなどの対策を立てていたようだ。またエコノ亀吉などは、下り坂ではモーターとバッテリーを電気的に切り離して回生ブレーキが利かないようにしていたチームもあったようだ。面白い取り組みとしては、SHIMADAのSEV-501は特殊電装製のモータを2台搭載して、第1ヒートは2台を同時に使用し、第2ヒートは追い風や向かい風で切り換えて使用するようになっていた。下の写真は、第1ヒート用セッティングで、左側が筑波用で、右側は秋田用である。本当であれば、第1ヒートは筑波用を2台で行きたかっようであるが、予算不足のため仕方なかったようだ。この技術はモーターを多く使用するので、特殊電装やZDPショップの方々が見たら喜びそうですね。第2ヒートはギヤセッティングの異なる秋田用を2台使用し、切り換えて使用したそうだ。そのため、ギヤの中にはワンウェイクラッチが組み込まれていて、一方のモーターが駆動しているときは、他方のモーターは止まるようになっている。さらに、SEV-501はミラクルでんちくんと同様に、ブロー成型した大型キャノピーを搭載し、プラダン車でありながら空気抵抗の低減に成功しているようだ。

 

3.3V出力の絶縁型DC-DCコンバータ(いわゆるブースト回路)を搭載しているチームは、追い風、向かい風あるいは登り坂、下り坂、そしてレース終盤の電圧ドロップに対応するために、様々な試みを行っていたようだ。

毎回恒例の情報収集
今回も、レースの合間を利用していろいろと偵察してきましょう。first step AISIN AWは豊田で成功したブースト機能をつばさ53号にも搭載。つばさ52号とともに上位を狙ってきたようだ。ミラクルでんちくんとエコノ亀吉もこの戦法を早くも採り入れてきたようだ。白浜では常時3輪が地面に接していなければならないというレギュレーションがある。そこで、つばさ53号は後輪の後ろに補助輪を付けることで車検をパスしたようだ。だが、はたして2輪(厳密には3輪)で走行できるのか?!に注目が集まる。つばさ53号ドライバーの清水拓也氏(写真右)は、唯一53号を2輪で運転できる。中村さんは5m走るのがやっとということなので、想像を絶するほど運転が難しいことは確かだろう。ということで、いろいろな車と混じりながらのスタートは苦手そうであり、第1ヒートではできるだけ上位を狙いたいところ。しかし、第1ヒートで53号は第4の支えとなる補助輪を使いながら無事スタートを切ったものの、記録的には19位と出遅れてしまった。第2ヒートでのスタートに不安が残る。つばさ52号を運転するのは、高畑美絵さん。原因は不明だが、第1ヒートは35位とつばさ52号も大きく出遅れた。

 

成蹊大学の新型車SEIKEI 006 ALIENはTGMYの14インチタイヤを装着した新型車を投入し、前面投影面積を減らしている。形状的にもタイヤなどによる不要な出っ張りがないため、空気抵抗を大幅に減らしているようだ。快調に走行していたので、今後の活躍が期待できそうだ(第2ヒート6位)。一方、堺市立工業高校のSCIENCE 803は、駆動ロスを最小限に抑えるために、回転数の高いマクソンモーターのトルクを、巨大スプロケによるチェーン1段掛けで減速してホイールに伝達していた。

  

第2ヒートで異変?! つばさ53号立つ!!
第2ヒートの出だしは団子状態に近かったのだが、まず注目を集めたのがなかよしZDPのミラクルでんちくん。昨年優勝したアヒルエコパレーシングのPursuiterもいいポジションを走行していた。しかし、トレッド幅が330mmと狭いミラクルでんちくんは、折り返しでのスピードが上げられず、タイムとともにエネルギーをロスしてラップを縮められない。

そこへ後方から距離を縮めてきたのがfirst step AISIN AWの53号と52号。スタート直後の雑踏の中を無事にくぐり抜けてきたようだ。53号はこれまでの常識を覆すほど安定して走行し、周囲を驚かせた!!! 特に折り返しでは、他車との接近もあったはずだが、何事もなく走り続けた。中盤には52号も2位に躍り出て、ワン・ツー態勢になる。前面投影面積が小さく空気抵抗が小さい両車は、そのまま走り続てフィニッシュ。またまたfirst step AISIN AWはEVエコラン界に偉業を残すことになった。お見事!!

 

2位と3位は東海大学木村研究室のファラデー・マジックとうにゃにゃん亀吉のエコノ亀吉2.5号が接戦を繰り広げる。この時点でWEM GP戦の1,2位を争っているだけに、お互いそう簡単に負けるわけにはいかない。序盤はファラデー・マジックが先行していたが、エコノ亀吉はミラクルでんちくんを交わして徐々に追い上げる。さらにエコノ亀吉は、搭載していたDC-DCコンバータによるブースト回路を使用して残り5分くらいで、ファラデー・マジックを追い抜いた。しかし、ファラデー・マジックには、浪越エレクトロニクス製のモーターコントローラが搭載されていて、DC-DCによる3.3Vよりもさらに強力なブーストを使用して38km/hまで加速。そして再逆転。たったの8m差であったが3位を死守した。この時点でファラデー・マジックは、2003WEM GP戦の首位に躍り出て、ヨイショット!ミツバが菅生で優勝しない限りは年間チャンピオンになれるところまで歩み寄った。

 

レース(第2ヒート)結果は以下の通り。なお、高校生を対象としたスクールクラスでは和歌山県立和歌山工業高校機械工作クラブAのLITTLE QUICKIE Zoがトップとなった。(k)

順位 No. チーム名 車 名 クラス 走行距離(m)
1 28 first step AISIN AW つばさ53号 o 31,709
2 27 first step AISIN AW つばさ52号 o 31,360
3 31 東海大学木村研究室 ファラデー・マジック o 30,773
4 1 チームうにゃにゃん亀吉 エコノ亀吉2.5号 o 30,765
5 24 なかよしZDP ミラクルでんちくん o 30,055
6 18 成蹊大学 SEIKEI006 ALIEN o 28,592

 

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