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DREAM CUPソーラーカーレース鈴鹿2003 車検レポート 2003/07/26 13:00


今年も熱いソーラーカー大会のシーズンがやってきました。ことしは梅雨明けが遅かったので天気が気になるところですが、7月26日の鈴鹿サーキットは晴れていますよ。さて、車検会場などで見た今回の大会の注目アイテムを紹介しよう。

1.太陽電池戦争勃発

年々、高効率な太陽電池を搭載しているチームが増えてきているが、今回の鈴鹿はついにここまできたか・・・、という感じですね。

裏面電極型単結晶シリコン太陽電池(大阪産業大 OSU model S')
ホンダドリームやZDPスーパートンカチ、最近でホンダエンジニアリングEVERのスペリアやスバルSuperEnergyなどが採用してきたことで有名なSunPower社の太陽電池。通常の太陽電池ではpnジャンクションが表面付近で上下方向に形成されている。これに対し、同社の太陽電池は裏面電極型というオリジナルの構造を持っていて、裏面にpn接合がストライプ状に形成されているのが特徴的である。この構造により太陽電池表面にあるフィンガー電極(細かい筋状の電極)やバスバー電極(太陽電池セル同士を接続する太めの電極)が不要となり、太陽光がより多く捉えられるようになる。積水樹脂では、このセルを印刷技術を応用してモジュール化することに成功し、コストダウンとともに19.5〜20%程度の高変換効率化を達成した。OSUに搭載された太陽電池モジュールは定格的には推定で1400〜1600W程度の発電を行えるようになる。従来、約900Wを発電していたmodel Sの実質1.5〜1.6倍程度の発電が可能になったと予想される。

ガリウム砒素太陽電池(芦屋大 Sky Ace TIGA)
1987年World Solar CHallenge (WSC)でGM Sunraycerが搭載した単結晶ガリウム砒素太陽電池は、当時としては20%を越える画期的な変換効率で優勝に貢献した。2001 WSCでは5台のソーラーカーがガリウム砒素系太陽電池を搭載していたが、AuroraはGaAsのみでpnジャンクションを形成したシングルレイヤーの太陽電池を搭載していた。セルの変換効率は24%位ありそうだが、Aurora代表のDavid Fewchuk氏によるとモジュール効率は21%とのことであった。今回は、芦屋大が2002年の鈴鹿で使用したkokam社のリチウムイオンポリマー電池をAuroraに斡旋?した代わりに、Auroraが昨年使用していたシングルレイヤーが貸与電池されたそうだ。これにより後ろの約半分がガリウム砒素太陽電池に変更され、Sky Ace TIGAの太陽電池アレイ出力は大幅に向上したはずだ。後ろの部分のみで約700Wを発電し、トータルの発電量は推定で1300W程度と見積もられる。

トリプルジャンクション太陽電池(Aurora 101)
ガリウム砒素系太陽電池には、コーンに乗せるアイスクリームと同様にシングル、ダブル、トリプルの3種類がある。当然、トリプルが最も高級である。このトリプルとはインジウムガリウムリン(InGaP)・ガリウム砒素(GaAs)・ゲルマニウム(Ge)の3種類の半導体のことであり、ゲルマニウム単結晶基板の上にGaAsやInGaPが有機金属ガスによる化学気相成長法(MOCVD法)により堆積している。世界最高レベルのガリウム砒素(GaAs)系の太陽電池を搭載したソーラーカーと言えば、2001年のオーストラリアで開催されたWorld Solar Challengeに出場したオランダのNunaである。今回Auroraは変換効率26%のトリプルジャンクションタイプをカウルの約4割に貼ってきた。トータルの発電量は推定で1800Wと日本のソーラーカー史上、過去最大の発電量を誇るモンスターマシンに変貌した。特性等は下に解説します。

トリプルジャンクションは図のように3層構造になっています。表面では短い波長の光を吸収し内部に入ると長い波長の光を吸収します。エムコア社の資料によると、内部の量子効率や電圧電流特性はこんな感じ。シリコン太陽電池と違って1枚で3種類の半導体の電圧が直列に合計され、1枚でも実に2.27Vも出るんですね。すごすぎる・・・。

InGaP pnジャンクション
GaAs pnジャンクション
Ge pnジャンクション
Ge 基板

 

 

2.ミツバのDDモーターを採用したチームが激増

昨年、OSU、東海大、ジャンクヤード、堺市立工業高、紀北工業高、宇都宮工業高なのでテストされていたミツバ製のソーラーカー用モーターであるが、昨年に市販化が行われ、ことしの鈴鹿になだれのように押し寄せてきた。16台程度が使用した?

ミツバDD市販タイプ(バカボンズ 湖上の風V)
昨年、鈴鹿サーキットや大潟村ソーラースポーツラインでテストされたプロトタイプモーターをもとに開発されたミツバDDモーター。電圧や回転数などで4種類程度のバリエーションがあるようだ。スロットル特性や、電流リミットなど様々な設定値をソフトで調整する機能がある。お得意の進角調整機能も自動化され、高効率な速度域が広いのも特徴である。ことしは、多くのソーラーカーに搭載されることになったが、チェーンなどによるギヤ比設定ができない分は、電池電圧などの細かいセッティングが重要になると思われる。

ミツバDDプロトタイプ小(金沢工大 実験車3)
2002年大会でテストされていたエンジョイクラス用DDモーターをリアに2台装着した4輪の試作車。OSU model S'と異なるアプローチに注目が集まる。2台のモーターを使用した場合、コントローラーも2セット必要となり、重量や変換効率では不利になりやすく、またトルク配分をどのようにコントロールするのかなどの課題もある。残念ながら予選のタイムトライアル中にガードレールと接触して右後輪付近に大きなダメージを受け、第1ヒートのグリッドに並べなかった。

ミツバDD市販タイプ(大阪産業大 OSU model S')
昨年、ミツバのドリームクラス用プロトタイプをテストしていたOSUは今年は市販タイプを使用している模様。このモーターはローター径が約300mmと大きく、一般のソーラーカーに取って若干オーバースペックだったようで、市販バージョンでは若干小型化されたようである。左後輪1輪のみにDDモーターを搭載していた。このようなレイアウトは1996年のホンダドリームでも採用された実績があるが、アップダウンやコーナーが多い鈴鹿に対応できるのか、注目されるところだ。(レース中にパンクがあったようだが、このレイアウトと関係があるのかはわかりません。)

UNIQUE SR180N(尼崎工業高 尼高-CHALLENGER)
私はいままでギヤ内蔵のモーターと思っていましたがUNIQUEにもホイールモーターがあったようです。DDと説明されましたが、これって本当? とりあえず、紹介します。 残念ながら現在では入手もサポートも極めて難しいようです。

 

3.バッテリー&キャパシタ

さて、新型バッテリーや電気二重層キャパシタはどんなものが出てきているかな? ドリームクラスのリチウムイオン電池は日進月歩ですね。

ENAX・リチウムイオン電池(再輝・ENAX)
今回、新たに開発されたLGケミカル製のリチウムイオン電池(18650タイプ)をモジュール化したリチウムイオンバッテリーパックを開発。1本あたりの放電容量は1800mAhから2200mAhに引き上げられ、大幅にエネルギー量を増加させている。概算であるが185Wh/kg程度か? 金沢工大、OSU、パンダサン、東海大翔洋高、呉港高といった多くのチームで搭載されている。
エナックスは自主開発のEV用リチウムイオン電池も開発しているので、将来どのようなものが登場するのか楽しみである。

Kokam・リチウムイオンポリマー電池(芦屋大 Sky Ace TIGA)
2002年大会でデビューしたKokam社のリチウムイオンポリマー電池.。180Wh/kgの高エネルギー密度を誇り、昨年のSky Ace TIGAの優勝に大きく貢献した。ことしも新しいものを投入している。芦屋大のSky AceU、SUNLAKE東洋紡そしてAuroraで使用されている。現在、入手できる中で、最も高性能な電池のひとつと言われている。リチウムイオン電池が21kg搭載できるのに対し、リチウムイオンポリマーは18kgまでという厳しい制限を受けているため、ちょっとかわいそうな感じもします。それでも、高成績に貢献できる優れもの。

リッセル・リチウムイオン電池(金沢工大 実験車3)
電気自動車用に開発されている大型リチウムイオン電池を、2001年頃からソーラーカーでテストしてきた。EV用の大型品は電池の搭載個数を減らして信頼性を向上させたり、低インピーダンス化を図り、パワー密度を向上させていると考えられる。

日本ケミコン・電気二重層キャパシタ(HALクラブ HAL Sunny V)
今年、EVエコランや燃料電池自動車レース用に開発された2.5V-500Fの電気二重層キャパシタを鉛バッテリーと並列に接続。、登り勾配などでの負荷変動を緩和するためにキャパシタで対応させようとしいう狙いだ。 キャパシタとしてはエネルギー密度やパワー道度が低めなので、他社製品に比べ、比較的軽量化しやすい。

パワーシステム・電気二重層キャパシタ(柏会 武蔵)
スタック型の電気二重層キャパシタを装備。鉛バッテリーと並列に接続することで、エネルギー貯蔵システム全体の抵抗値を低減。エントラントの福北博史氏の試算では7%くらいエネルギー効率が向上するとの話でした。

 

4.その他の新情報

さて、ここからは新しいもの、変わったもの中心にまとめてみましょう。まず、最初は紀北工業高校の新車、紀北TECH SOLAR。なんとなくOSU model S'の形状に影響を受けているような感じがします。フロントステアリングのリンクは、なんとなくEVエコランのミツバHyper USO 800の影響を受けたような感じがするのは私だけ?

 

次は、チャレンジクラスにチェンジした堺市立工業のSCIENCE 703(写真左)。太陽電池は昭和シェル石油の新品モジュールに張り替え。太陽電池はここまで来ました。Aurora 101もコックピットを100mm下げたり、リチウムイオンポリマー電池を使用したりなどの改良を行ってきた(写真右)。昨年トラブルが起きた発電系もシンプルなシステムに変更され、信頼性の向上とともに、車体全体の軽量化も達成された。

 

今度は、ちょっと変わった流行りモノです。OSUなどのチームではすでに行われていましたが、携帯電話を使ったテレメトリーシステムや、GPSによる位置情報を収集してエネルギーマネージメントに生かそうといチームがありました。写真左は東海大翔洋高のロガーモデム、右はHALクラブのGPSアンテナ。

 

前夜祭では、トップチームや招待チームなどによるチーム紹介やことしの抱負などが行われました。写真右はAuroraのDavid Fewchuk氏。ことしはどんな走りを見せてくれるのか?(k)

 

 

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