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キムヒデの2003WEMモーターレポート 2003/06/01 14:00


2003WEMレポートの後半は楽しめてもらえたかな。ところで、今回のWEMはモーターについて、いろいろなところでアモルファスという言葉が飛び交っていますね。アモルファスというと、この業界では太陽電池くらいしか思いつきません。そこで、アモルファスコアなどの技術を詰め込んだ最近のWEM用モーターの開発動向についてキムヒデ流に解説しましょう。間違っているところもあるかもしれませんし、かなり
難しい内容かもしれないけど、なにか質問などがあったらSOLAR-PALのメーリングリストなどに参加してくださいね。


1.市販WEM用モーターの紹介


まずは、現在使われている主なWEM用市販モーターを紹介しよう。

特殊電装(TOKUSHU DENSO)
今日ではEVエコラン用モーターの老舗的な存在の特殊電装。ZDPの池上さんが最初に使用し、現在では多くのチームで使われるようになった。同社の大型のモーターはソーラーボート競技に使用されることもあるようだ。写真のEVエコラン用モーターはアウターローターのDCブラシレスモーターで、コントローラと一体化した構造を採る。2003年5月時点では、24V仕様の秋田用、筑波用の2種類が存在している。池上さんによる特電モーターの解説はこちら。この解説は、参考になりますね。近年、従来型をベースに改良が行われたため、特性が改善されている。2年以上前に購入したモーターを使用している場合には、最新の特性表を確認しておいた方がいいだろう。昇圧回生機能は無いので、10V程度にプリチャージした電気二重層キャパシタに接続を切り換えることで、回生ブレーキが可能だ。エコデン用の12V仕様も存在しているが、こちらは24V仕様に比べると完成度がいまひとつらしいので、今後の改良に期待します。

ミツバ(Mitsuba)
エコノ・ムーブにDD旋風を引き起こしたミツバは、EVエコラン専用に本格的ダイレクトドライブ(DD)モーターを投入し、1999年にはWEMで初優勝した。その後、2001、2002年用に市販化を行い多くのチームが採用した。その結果、2001〜2002年WEMの上位はミツバDD勢がほぼ独占する形となった。倍電圧(24V)入力に対応し、ソーラーバイシクルなどの競技にも十分に使用できる。しかし、標準では昇圧回生機能が無いため、5V程度にプリチャージしたキャパシタに接続を切り換えることで、回生ブレーキが可能だ。2003年用には、EVエコランで培った技術をベースに、ソーラーカー用DDモーターの市販化された。さらに、2003年秋には、EVエコラン用の新型モーターが販売される予定らしい。こちらも、いったいどんなものに仕上がるのか、今から楽しみだ。

MAXON MOTOR(マクソンモーター)
マクソンは、かつてZDPのモスラが採用したり、現在では名城大やアヒルエコパレーシングが使用している。コアレスDCブラシモーターは極めて小型軽量であり、車体の軽量化に貢献する。しかし、トルクが低いため、パワーを得るために回転数を高くとる。その結果、減速比が大きくなるしかない。そのため、チェーンの2段あるいはギヤ&チェーンの2段減速を取ることが多い。浪越エレクトロニクスのモーターパワーコントローラ(MPC510)は昇圧回生制動機能もあるため、このモーターと組み合わせて使用しているチームも多い。

本田技研工業(HONDA)
小型の運搬機等用に開発されたDDWシリーズは、用途の割には過剰なまでの性能を誇る。そのため、エコノムーブからソーラーカーまで、ほとんどの大会に姿を見せる優れもの。菅生サーキットにも対応できる豊富なラインナップ。インナーローター構造で、コントローラーもケース内に内蔵。パワーと性能の割にリーズナブルな価格で入手できたことから、根強い支持を受けている。昇圧回生機能も標準装備なので電気二重層キャパシタとの相性もいい。オイルシールを外すなどで、数%程度効率が上がるなどの使いこなしノウハウも豊富。Team Junk Yardのソーラーカー「ガメラ」が搭載したモーターでもある。

 

2.最新WEM用モーターのトレンド技術

次にWEM用モーターの最新の要素技術について解説しよう。

DD(ダイレクトドライブ)
WEMにおいて駆動系の効率を上げようとした場合、電気伝達効率であるモーターの変換効率、機械伝達効率であるギヤ&チェーンの効率を高めることが重要となる。チェーン&ギヤによる場合は機械伝達効率は96〜98%前後といわれ、ギヤのみによる場合で97〜99%といわれている。(ZDPの池上さんはギヤよりもチェーンの方がコストや実際の信頼面から支持。)この辺の優劣については、断定できない点が多く駆動方式の選定は悩ましい限りだ。一方、タイヤホイールを直接駆動するDDモーターはチェーンやギヤが存在しないため機械伝達効率は100%と考える。ミツバ、ホンダエンジニアリングEVER、モミテック(ZDP籾井くんの自作)で、DDモーターが使われるのはこのためだ。ところが、40km/h程度の速度で巡行するエコノムーバでは、20インチのタイヤを用いた場合で420〜430rpm程度の回転数となる。このような回転数はモーターにとって低速であるため、少ないスロット数でDDを実現しようとすると巻線のターン数が多くなり電気抵抗が増加して銅損が増えやすくなる。また、低回転数でパワーを得るためにはトルクが必要となるため、ローターを大きくする必要が出てくる。そのため、ローター径を大きくとり、多極化することが行われている。コアに鉄芯を用いたモーターの場合、コアの体積と動作周波数に応じて、磁界Hと磁束密度Bとの変化する際に発生するヒステリシスロスが増加する。そのため、DD化を行うと機械伝達効率は増加するものの、鉄損の増加が大きな課題となる。したがって、DD化によって機械伝達効率上げると、その代償として電気伝達効率(モーター効率)が低下しやすくなり、モーター重量も増加するので様々な工夫が必要になる。一方、ミラクルでんちくんとファラデー・マジックのコンビは、モーターの変換効率を最大限に追求することで、チェーン駆動を採用した際のハンディーキャップを挽回し、DDでなくても上位が狙えることを2003WEMで証明した。

鉄系アモルファスコア
電柱の変圧器や蛍光灯の安定化装置などには、珪素(ケイ素)鋼板などの電磁鋼板を鉄芯(コア)とし、それに銅線を巻いた構造のトランスが用いられてきた。ここでケイ素鋼板とは、鉄にシリコン(ケイ素: Si)などを1〜3%程度添加した薄板のことである。近年、珪素を含まないものが増えてきたことから電磁鋼板と呼ぶことも多い。モーターのステータコアなどに鉄芯を用いるのは、B=μHという関係から、少ない巻線の割に高い磁束を得ることができるためである。導線を巻いたコイルの中にコアを入れることで、電磁石の力は強くなったり、インダクタンスが大きくなったりといった効果があるため、電磁装置の小型化に貢献する。しかし、磁界の変化にともない発生するヒステリシスロスや渦(うず)電流損が発生するため、鉄損が少ないコア材料(軟磁性材料)を選択する必要がある。主な電磁鋼板の磁界に対する磁束密度の変化を右図に示す。

モーター用コアに求められる性能は多く、(1)高い飽和磁束密度、(2)低いヒステリシスロス、(3)高抵抗、(4)無方向性、(5)高い透磁率などの条件を満たす必要がある。

(1)の飽和磁束密度は、磁界の増加に対してこれ以上磁束密度が上がらない値をいう。図中右上で飽和しているときの磁束密度だ。この値は、どこまで電磁石が強くなれるかという目安になり、この値が大きいほどモーターの小型・高出力化が可能となる。図の中では、珪素鋼板が優れていることになる。余談だが、かなり昔、ピップエレキバンのマグネットが1800ガウスと宣伝していたのも磁束密度のことだ。磁束密度の単位は以前はガウスを使ったが、T(テスラー)という単位を使うことになったためCMでも最近は聞かれなくなった。(2)のヒステリシスロス(履歴曲線損失)は、磁界をかけて磁束密度が上がったあと、それを取り除いても磁束密度がゼロに戻らないために発生する。もし、大きな磁束密度が残れば優れた永久磁石といえるのだが、モーターやトランスでは極性が反転して、反対向きの磁束を発生する必要があるため、残留磁束が小さい方がよい。上図において磁界と磁束密度が変化する際に囲まれた部分が存在するが、この面積がヒステリシス損に対応する。したがって、鉄系アモルファスやフェライトはヒステリシス損が小さいことがわかる。この鉄系アモルファスとは、溶融状態の鉄を急冷することで作られ、ガラスのように結晶構造を持たない。したがって、磁束が打ち消し合うことで残留磁束が小さくなり、電子も動きにくくなることから抵抗も高くなる。その結果、渦電流の低減にも効果があると考えられる。以上を総合すると大きな磁束密度を持ちながら、ヒステリシスロスが少ないということで、素材的には鉄系アモルファスがよさそうである。しかし、1枚が25μmと薄く千枚以上も積み重ねる場合があり、加工性も悪いことから製造コストは高くなる。そのため、モーターへの使用例は極めて少ない。(3)の高抵抗はうず電流損を減らすのに有効となる。アモルファスの場合、原子がランダムに存在しているため、電子が移動する際にぶつかりやすくなるため高抵抗になる。また、積層した電磁鋼板間を絶縁することでも、うず電流の発生を抑えることに役だっている。(4)の無方向性は、どの方向から磁束が来ても同じように通す性質のことをいう。スターターコアは同心状に配置されるため、無方向性という性質が必要になる。一方、ソレノイドなど一方向のみの性能を重視すればよい場合には、圧延方向にのみ磁束を通しやすくした方向性ケイ素鋼板をりようするとよい。(5)の高い透磁率は、磁界Hに対してどの程度の磁束Bを発生させるかを決めるものである。特に磁気センサに重要な性質といえる。ただし、透磁率が高い材料に大きな磁界を与えるとB=μHの比例関係を満たさなくなるので、エアギャップを含むモーターの磁気回路においては、あまり大きな意味を持っていないように思える。

次に、主なコア材料の特性を以下に示す。(日本ケミコン(株):アモルファスチョークコイルカタログより引用) 鉄系アモルファスは飽和磁束密度が高く、鉄損も少ないことから有望な材料であるといえる。一方、薄手ハイライトコアやスーパーEコアなどケイ素鋼板なみの加工性を保ちつつ性能を上げているものもあり、こちらも注目される。また、超微細結晶鉄(ファインメット)も、飽和磁束密度が若干低めではあるが、鉄損が少なそうなので気になる材料である。しかし、WEM用DDモーターに対しては総合的に考えると鉄系アモルファスコアが現時点で最も優秀な材料であると思う。

 

進角制御
DCモーターの速度(あるいはパワー)の調整には、PWM(パルス幅変調)制御が用いられることが一般的である。このPWM制御は、通電時間であるパルス幅を変化させ、DUTY比(1周期におけるonの時間の割合)を0〜100%の範囲で変化させることでモーターパワーを調整するものだ。この方法は、on状態の時にはMOSFETのon抵抗がゼロに近いため抵抗よりも損失が小さく、offのときは抵抗がほぼ無限大で、電流が流れないことからジュール損の発生が抑えられる。したがって、抵抗器をモーターと直列に接続してパワーを絞るよりも効率がよくなるため、一般的に用いられるようになった。とくにDCブラシレスモーターの場合は、コントローラ内に巻線コイルの通電を切り換えるMOSFETなどのトランジスタがもともと存在するので、それをそのまま流用できるため搭載例が多いようだ。しかし、off状態からon状態、on状態からoff状態にMOSFETが切り替わる際に、抵抗値が0と∞の間の有限値を取り、このわずかな時間に電力を消費してしまうため、高速スイッチングが可能なトランジスタを使用することなどが重要である。一般に、DUTY比を絞った場合のコントローラ込みのモーター変換効率は低下するため、できればスロットル全開で走行できるようなセッティングを行うことが望ましい。この要求に対応するために、ステータコイル(巻線)に通電するタイミングを早めることで、モーターにより多くの電力を食わせ、速度を調整する方法が進角制御だ。この方法は、PWM制御の際に生じたスイッチングの際のロスが低減できることから、効率よく速度を調整できる領域を生み出すことができる。しかし、進角を進めすぎると効率が低下し、PWM制御に比べて制御可能な速度の範囲が狭い。したがって、巡行時の速度を微調整する程度に用いることしかできないのが実情だ。これに対して、通電角を120度から広くして180度にまで広げる通電角ブースト機能を持たせているコントローラーも存在するようだ。

キャパシタ回生制動
折り返しポイントなどで減速する際に、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)に回生電流を効率よく蓄えることで、エネルギー効率を改善する技術。制動力および制動効率を高めるためには、巻線の抵抗が小さいモーターが有利となる。コントローラーでの昇圧回生機能などにより使い勝手が改善できることから、今後のモーター開発の際にはぜひ考慮してほしいポイントだ。また、燃料電池によるエコラン競技も2003年から始まりましたが、瞬間的なパワーに対応しにくい燃料電池自動車のモーター入力部にキャパシタを使用することも期待される。今日では、ミラクルでんちくんなどエコノムーブ上位車には必須のアイテムとなった。

 

3.特電アモルファス仕様の誕生ストーリー

1年以上も前のことになるが、「なんとなく・・・」、特殊電装西村氏、ZDP池上氏、東海大木村がベルギービールを飲みながら雑談をしている中で、企みが練られたように思う。

西村:『こんどのでんちくん用のモーターだけど、どうする?』

という切り出しだったろうか? 今から思い返すと「なんとなく」といいつつも、どこかに誰かの策略があったのではという気もする。でも、この業界ではよくあることなので、いちいち気にしていてはいけない。そんなことはさておき・・・、

木村:『やっぱり次はアモルファスコアですかねぇ?』

池上:『うーん、でも小型モーターでもメリット出るのかな?』

西村:『それよりコアはどうやってつくるの?』

池上:『籾井のところで積層の経験があるので、できないことはなと思いますけど・・・。』

木村:『でも、かなりの金額と根性と意地をつぎ込んではじめて可能になるようですよ?』

西村:『噂では乗っている乗用車よりもモスラの方がお金かかっているらしいね。』

池上:『いえ、それは噂でなくて事実です。』

西村:『さすが・・・、というか、すごいね。』

池上:『情熱がない俺様には、とても真似できませんね。』

木村:『でも、アモルファスコアのモーターは、この業界ではまだホンダドリームとモスラくらいなので面白そうですよ。』

西村:『アモルファスはまだやったことないので、どんなものか一度やってみたいですね。』

池上:『それでは、やってみましょうか?』

木村:『特電のコアサイズなら試してみたいのがあります。』

というような流れ??だったかは今となっては定かではないが、概ねこんな感じでプロジェクトがスタートした。まず着目したのが、電気二重層キャパシタやアルミ電解コンデンサで有名な日本ケミコンが製造しているアモルファスカットコア(写真左)。大電力用チョークコイルなどに使われるコアだ。ソーラーカーやエコノムーブの電力回路用には大きすぎて使えそうにないなと思っていましたが、特電のモーターコアには行けるかも?! さっそく、岩手エレクトロニクス松岡氏、日本ケミコン光安氏に問い合わせをしてみると、「想定外の用途ですが今回は特別!!ということで、試験的に使ってみてください。」ということで了解を得る。これをステーター形状にカットするのだが、ここでも加工費が恐ろしくかかるワイヤー放電カットでないと切れない。アモルファスって、なんて面倒なんだ・・・。いままでに切ったことが無い素材なので試し切りをして条件を探り、なんとか無事カットを終える。ここで、1個のアモルファスカットコアから2個のステータコアが取り出すことに成功。「池上さんならモーター壊すことも無いだろうから、予備はなくても大丈夫ですよね。」という一言で押し切り、東海大木村研のファラデーマジックも急遽搭載することになった。ところが特殊電装の西村さんから「人手も時間も足りないので、でんちくん用はこちらでやりますが、東海大分の巻線はそっちでお願いします。」ということで、巻線をすることになってしまった。えー!?、巻線はやったことないぞ・・・。でも何事も経験だ。そういえば、以前に池上さんも巻いていたっけなぁ。

 

巻線START! やはり立場上まずは、私が手本とならくては・・・。ミツバさん関連のどこかの記事で見たような巻線の様子は、確か?こんな感じ?だったぞ。ということで、見よう見まね&試行錯誤の巻線が始まる。しかし、だんだん時間が経つにつれ頭の中では何回巻いたのかをわかなくなるので、必死に数字を焼き付ける。「俺に話しかけちゃいかん!!」 しかし、巻線が積み重なってくると巻乱れがおおきくなり納得がいかなくなる。「ええい、今のは練習。ここまで!!」ということで自らNGを出し、せっかく巻いた巻線をほどく。ほどくのは一瞬だ。「さぁ、本番巻だ。」(このあと巻線START!へ戻るを繰り返す。) しかし、自分には巻線職人の才能はないのかもしれないと早々と見切りをつけることになった。「きっくうの方が才能があるかもしれない。私のノウハウを全て伝えるのであとは任した。」ということで、菊田君にバトンタッチ。

1スロット2時間という超丁寧な巻線をこなし、私が見てもすばらしい出来栄え。特殊電装の西村さんも「うまいですねぇ、僕よりうまいかも!?」と絶賛の巻線が完成。各相の特性も揃っている・・・。菊田君は、もしかして巻線職人の才能もあるのかもしれない。

 

というような感じで巻線が行われモーターが完成していった。特殊電装および日本ケミコン関係者の方々、無理に無理なお願いを立て続けに出しながらも、快く?お引き受けくださり大変お世話になりました。モーターが完成したのは4月26日。できあがったモーターの特性表を見て「すばらしい!!」と、一同から感動の声。「これなら、行けますよ・・・。」

図はファラデーマジック用のものですが、ミラクルでんちくん用モーターもほぼ同様な特性。アモルファスコア化によって、特に低電流域(効率特性の左肩付近)の効率が改善され、銅損の低減により高電流域(効率特性の右側)も改善され、これらの効果が相乗してピーク効率も向上したと考えらる。また、取り付け位置が異なる3セットのホールICを切り換えることで、進角調整機能も持たせた。進角を進めることにより、図中矢印のように特性が変化する。

一方、池上さんの方からはアルミ合金の7075を使用した大径スプロケ製作の話が来る。「モーター側のスプロケを15Tとするとタイヤ側は市販品で売っていないので、お金かかるけど2セット行っちゃいますか?」というお誘いに、とっさに反応してしまう。ああっ、スプロケが5千円札や1万円札に見えてくる・・・。情熱がない池上さんがここまでやるんだから私もがんばらなくては・・・。けっきょく、6枚ずつを製作しましたが、事前の計算通りにセッティングを行えたため、両チームとも1枚づつしか使用することはなかった・・・。

4月27〜28日にテストランを終え、29日に東京に帰ってきて、ボーッとしながら30日に出発の準備を進め、5月1日に秋田で開催される2003WEMに向かうことになった。その後、アルミ電解コンデンサを日本ケミコンKZEシリーズにチューンするなどの技を駆使し、ケースに入れて実戦仕様に仕上げた。完成した時間は5月2日の午前4時、場所はホテルサンルーラル大潟の一室であった。(5月2日は燃料電池フォーラムもあったはずでは・・・?) ミラクルでんちくんとファラデーマジックに搭載された2個のモーターは、DDでなければ勝てないという定説を見事に打ち破り、チェーンドライブならではの勝負強さを発揮した。

今回のレポートは、モーターに注目してまとめてみましたが、どうだったかな? もちろん「車体設計&製作&メンテ」、「電気二重層キャパシタ」、「バッテリー利用技術」、「ギヤ比セッティング」、「エネルギーマネージメント」、「ドライバーの運転技術」、「ピットワーク」、「集中力」、そして「勘」、また何よりも「運」の全てが揃ったことで初めて結果が出たといえます。

 

4.最新エコノムーブ用モーターの動向

最後に、WEMのために開発された最新モーターの数々を総括しよう。

モミテック
ZDP籾井くん個人で製作を行っているブラシレスDDモーター。EVエコランに初めて鉄系アモルファスコアを導入するなど意欲的なチャレンジを行ってきた。まず、初代モスラに搭載され、コントローラーはホンダDDWのものを流用。その後、コントローラは、ミツバさんのご厚意によりミツバ製を使用。2002年には、菅生用DDの開発を行ったため、秋田用と合わせて2種類の自作モーターを保有。ZDPのスーパーモスラに搭載。コアの体格が大きくなるDDモーターにとって鉄系アモルファスコアは、効果的なアイテムだと考えられる。低抵抗なモーターは路面状況によって電流値が変化しやすい。そのため、電気二重層キャパシタによるピーク電流の緩和が効果的となる。

特殊電装
実は、でんちくんシリーズの上で毎年のように改良が行われ、少しずつ製品にフィードバックが行われてきた。今回は鉄系アモルファスコアを試験的に導入。さらに効率を上げてきた。ホールICを3セットを切り換えて使用することで、3段階の進角制御を実現。ホールICを3セット配置したために、ノーマルのコントローラー基板では手狭になり、モーターから独立している。ZDPのミラクルでんちくんと東海大のファラデーマジックに搭載。特性的には特電の筑波仕様に近いため、空力の悪い車体などでは電流値が大きく変動する。得るものも大きいが、使いこなしによっては失うものも大きいので注意が必要だ。機械伝達ロスが発生するものの、容易にギヤ比を細かく変更できることから、条件が異なるほとんどのEVエコランレースにセッティングで対応できるという長所を持っている。

ミツバ
いつも 、何か仕掛けてくるヨイショット!ミツバ。同じ作戦を繰り返すことは、チーム哲学に反するらしい。毎レースのように、スペシャルチューンしたモーターなどを投入してくる。2003WEMでは、鉄系アモルファスコアをついに導入した模様だ。さらに効率を上げてきたはず。写真のアモルファスDDモーターはヨイショット!ミツバのHyper USO800に搭載。2003WEMでは、コネクタの接合不良?のために結果が出なかったが、その後のスーパーラップをみるとポテンシャルは非常に高そうである。 中までは見えなかったが、迫力を感じます。さすがに、このスペシャルモーターの量産化は無理とのこと。

ホンダエンジニアリングEVER
もちろんエコノムーブ専用に開発されたモーターで、アクア用で92%程度の変換効率といわれている。8:9巻のステータコアなどの特徴がある。ホンダエンジニアリングEVERのアクア、オルカに搭載。左写真は今回IRCとともに独自に開発を行った16インチ径のオルカ用DDモーターだ。20インチから16インチへ小径化することで、DDモーターの回転数は高くなるため、巻線のターン数は少なくてすむ。そのため、オルカの16インチタイヤは、空力的なアドバンスを得るだけでなく、モーターの高効率化も達成できているのではないかと思われる。

 

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