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BackNumber〜2008鈴鹿8  

鈴鹿2008 ZDPチーフエンジニア池上の「今年の注目ポイント」

2008/08/02 21:00

数々のソーラーカー設計製作経験を持つZDPチーフエンジニア池上が、今年の注目ポイントをピックアップしてみました。(i)

ロールバー
 
今年初参加のNo84沖縄県八重山商工高等学校機械工作部のカーボンCFRP製ロールバーです(左)。車検で剛性不足を指摘されていました。見た目の形状はOSUを始め多くのチームが採用する形状ですが、このチームのものは単板で、車検員が手で押すと変形するレベルのものでした。ロールバーは転倒時に車重をささえドライバーの頭部を守るためのものですので、フレームに付け足すものではなく、フレームそのものと同等の強度が要求されるとイメージして設計すると良いです。右はアルミフレームのロールバーの例です。

ナイトハルトゴムばねサスペンション
 
No72池田技研工業のサスペンションはナイトハルトゴムばねを使用しています。前輪(左)はスクータ用のショックアブソーバユニットを併用し、ラジコンカーのようなサスペンションを構成しています。ただ、この構成ではサスペンションがストロークするとトレッド、キャンバーも大きく変化するため転がり抵抗悪化とタイヤの磨耗には不利です。リヤサスペンションはナイトハルトゴムばねだけで構成されています。単発の入力なら衝撃吸収機構として十分機能しますが、走行による連続入力ではゴムの発熱による問題が懸念されます。でもシンプルで面白い機構ですよね。

ブレーキトラブル
安全性の観点から、ブレーキ性能は非常に重要なポイントです。オートバイ用のブレーキを流用するのは一般的ですが、ブレーキトラブルの発生していた車が何台か見受けられました。
左はNo38日向工業高校ソーラーカープロジェクトのブレーキです。キャリパはソーラーカー定番のヤマハジョグZR用ブレンボで、ひきずり防止のためにダブルクリップのつまみ部を使ってパッドを広げるこれも定番チューニング済みですが、予選でキャリパのピストンシール部からブレーキ液のにじみが発生していました。通常の使用であれば液漏れを起こすことはありませんが、溶剤系の洗浄材、潤滑材をスプレーしてシールゴムがダメージを受けた可能性が考えられます。キャリパー廻りをクリーニングしたい場合は水洗いがお勧めです。ぬるま湯に家庭用洗剤を少しまぜて要らないハブラシ等で洗浄し、最後にエアブローで水分を飛ばしてあげればOKです。キャリパーのピストンを分解して完全にメンテナンスする場合は、シールゴムにはブレーキ専用のラバーグリスを薄く塗布してください。1年間使っていないソーラーカーでピストンの戻りが悪くなっている場合は、ブレーキベダル(レバー)を操作してピストンを押し出し、手でピストンを押し込む動作を数回繰り返してピストンを揉んでやると動きが改善されることがあります。
 
右はNo10JTEKTソーラーカーTEAMのディスクです。ステンレス板(SUS430)の板を切り出した自作のブレーキディスクですが、フリー走行中に熱で歪んでました。自転車やオートバイ用のブレーキディスクもステンレス系の材料ですが、ブレーキ専用に開発された材料を使っています。何かトラブルが有った時にスペアパーツにすぐ替えられるように、極力市販品をそのまま使えるように設計しておくのがベターです。

サスペンションロッドエンド破損
 
No92大分工業高校、車検ブレーキテストで、サスペンションアーム先端のロッドエンドが破損して胴体着陸しました。一般的にはロアアームのロッドエンドは車重を支えるため、M10サイズを選択し、できれば高強度タイプ(NMB製HRTシリーズ等)を使用したいところです。アッパーアームは本来負荷は小さいはずですが、写真のようにロアアームがタイヤ中心より上側にある場合、ブレーキング時にロアアームの取り付け点を支点にテコの原理で前側に引っ張られる荷重がかかり、ロッドエンドが曲がったり、今回のように最悪破損する場合もあります。各点にどれくらいの力がかかるか、ラフな計算で良いので見積もっておくと良いです。

アップライト破損
 
No102今宮工科高校ソーラー研究部。予選中にアルミ角パイプの溶接構造製アップライトが破損しました。車軸を支えるブロックから削り出しの部分と、その上部に溶接されたアルミパイプ部とが完全に破断しています。破損のきっかけはブレーキのトラブルが引き金になった可能性も高いですが、溶接構造は溶接欠陥によるリスクがあるため、溶接接合部には高い応力が生じないように配慮が必要です。アップライト全体をアルミブロックからの削り出しとすれば、溶接部の強度低下の心配が無くなりますが、材料費、加工費は高くなります。この車の場合であれば、車軸を支えるアルミブロックをもっと上まで延長し、応力の低い部分で溶接すると良いです。ブロックにパイプを当てて溶接する場合も直角に当てずに斜めにカットして当ててやれば溶接長さを長くでき、溶接部の応力を下げることができます。このあたりのノウハウはちょっと昔のレーシングカーのサスペンション廻り溶接部品が非常に参考になります。

 
シートベルトの安全強化
今年から安全装備が強化され「肩部ベルトと腰部ベルトが連結されたシートベルト」は使用が不可になりました。つまり緊急脱出時に腰部のバックルを開放しても、「肩部ベルトと腰部が連結された」ベルトはランドセル状に肩に掛かっているため脱出の妨げになる可能性があり、バックルを開放するとすべてのベルトが外れるタイプが義務付けになりました。しかし、この規定変更を理解していなかったチームが10チームほどあり、車検で指摘されて急慮対応に奔走していた。幸い鈴鹿サーキットの土地柄、モータースポーツ部品店で無事購入できたようです。
  初走行は要注意
初めての車両、初めてのドライバーで走行する場合は、まずは十分な安全マージンを取ってスローペースで1周し、そこから序々にペースを上げるようにするべきてす。これはメーカーのプロの開発ドライバーでも徹底されていることです。No88千葉黎明高等学校工学部はフリー走行で1周目のシケインで曲がりきれずサンドトラップにコースアウトしてしまいました。幸い車体に深刻なダメージはなく、ピットでチェックした後は走行を続けられましたが、一歩間違えれば・・・走行開始直後は細心の注意を持って走行しましょう。

 
リヤサスペンション廻りロッドエンド破損
No4大森学園高校自動車部のリヤスイングアーム根元のロッドエンドが第1ヒートレース中、破損しました。ロッドエンドは本来の引っ張り方向で使えば問題ありませんが、特にサスペンション廻りを構成する場合どうしても首下を曲げる方向で使わざるを得ない場合が多々あります。ネジの根元に曲げをかければ、当然ネジの山谷の底に応力集中し、クラックが入る可能性があります。大森学園の車両は10年目とのことで、今まで強度キリギリでなんとかもっていたものが、クラック進展して破損したものと思われます。このような使い方をした場合「今まで数年なんとも無かったのに、突然壊れた!」と言う話を何度か聞いたこともあり、安全を考えれば定期的に交換するべき部品かもしれません。
  来年はピット作業のノウハウに変更あり?
永年のレース経験により、各チームは鈴鹿のピットを効率良く使うノウハウを身に着けています。写真は芦屋大学のピットの様子ですが、天井の梁にロープかけてソーラーカーのアッパーカウルを吊り、その下で車体で整備することでピットのスペースを有効利用しています。鈴鹿サーキットでは来年のF−1開催に向けて今年の9月よりピットエリアの全面建替えを予定しており、来年は今までのピットノウハウが使えなくなる可能性があります。鬼が笑う話ではありますが、来年の試走会はこのあたりのチェックも重要なポイントになりそう。来年の広くキレイになった新装ピットエリアが今から楽しみです。なんといっても最新F−1クオリティですからね!

 

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