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公式練習を終えて宿泊しているホテルに帰ってみると・・・、怪しい大人がホテルの1階で、当たり前のように怪しい行動を取っている。怪しい人は見ず知らずの他人であればまだよかったのだが、残念ながら知り合いだったので声を掛けることにした。「芦田さん、竹本さん、こんなところで何やってるんですか? 爆発物処理でもしているんじゃないかと疑われますよ。」 「いやぁ・・、車の調子が悪くってねぇ・・・。」ということで、芦田さんは、ロビーで修理中のようす。燃料電池自動車と電気自動車のダブルエントリーだと、調整がたいへんそうですね。昨年のEV ecorun in菅生で、ZDPを応援した竹本さんは、またまたミツバを裏切り?芦田さんと合流。「もう、徹夜で回路作ったもんだから、ガハハ! まぁ なんとかやってみるよ、ガハハ!」という感じでこの怪しい二人の作業は、深夜まで続いたらしい。そういう我々も、公式練習で使ってしまったバッテリーを充電しなければならない。ZDP鍋奉行の澁谷さんの部屋で充電を再開。念のため風呂場でZDP&東海大の3チーム合同の充電を行いました。便器の前にバッテリーが置かれていると、なんとなく我々の方も怪しいのかなと自覚させられます。
翌日の5月4日は世界初の燃料電池車レースとなるワールド・エコノ・ムーブのFCEV部門が行われました。報道用ヘリコプターのプロペラ音が響く中、各車一斉にスタート。レースはヨイショット!ミツバの「旧型USO800」(世界初なんだから旧型はないでしょう・・・)が終始リードし、前日の公式練習につづき本戦でも優勝。ドライバーの柳原さんは、世界最速の燃料電池自動車ドライバーとして歴史に名前を残すことになりました。今回の燃料電池は、燃料電池と水素吸蔵合金ボンベの2つの温度管理がキーテクノロジーとなったようです。東海大翔洋高のパピィは、写真右のような感じで燃料電池とボンベを搭載していました。水素吸蔵合金は、水素を吸うと発熱し、水素を出すと吸熱するという性質があります。その結果、燃料電池に水素を出し続けるとボンベが冷却され、水素供給が止まってしまうそうです。そこで、燃料電池の廃熱を、アルミ板やファンでボンベに伝えることで、水素ガス供給を保つ工夫をしていたチームがほとんどでした。また、内部抵抗が大きい燃料電池を自動車に用いると、加速時のパワーが不足することから、電気二重層コンデンサを併用したチームがほとんどでした。そのため心配されたスタートも、とくに問題なかったようです。このようなハイブリッド技術は、ホンダの燃料電池自動車にも使われていますね。一方、当初心配された水素吸蔵合金ボンベの温度低下はほぼ克服できたものの、次の課題として燃料電池のドライアウトの問題に突き当たったようです。この現象は、燃料電池に使われている固体高分子膜の中の水分が、水素イオンとともに出てしまい、水素イオンの伝導性が悪くなる現象です。加湿などの対策を施すことで、改善できるようですね。
燃料電池車レースの合間に、ZDPのメンバーは入念に整備を行っていました。「べつに、情熱はないんだよ。」(池上)、「ベアリングが死んでたのに、昨日はあんなに走っちゃたのか?」(籾井)
昨日の公式練習でタイヤバリアに突っ込んで大破したアクアも、迅速な復旧作業でレースに復帰してきた。中を覗くと、カーボンクロスをハンドレイアップした痕跡が見えますね。
さて、待ちに待った電気自動車レース部門の本戦です。フロントローのヨイショット!ミツバの「Hyper USO800」となかよしZDPの「スーパーモスラ」はアモルファスDDモーター(オリジナル)を搭載。2列目スタートの東海大の「ファラデー・マジック」となかよしZDPの「ミラクルでんちくん」は、チェーン駆動でアモルファスモーター(特殊電装)。アモルファス(非晶質)構造はランダムな原子配列となり、電柱に乗っている変圧トランスの材料として一般的な珪素鋼板と比較すると、透磁率が高く、鉄損が小さいという特長をもつ。その結果、モーターのステータコア(電磁石の芯)の部分に使用すると変換効率は数%程度向上するようだ。エコノムーブでは、初代「モスラ」が初めてアモルファスDDモーターを投入したが、今年はアモルファス鉄コアを採用したDCブラシレスモーターは、推定で4台となった。このあたりのモーター技術については、またまた長くなりそうなので別の機会にでも解説できればなぁと思っています。 レースがスタートし、まず1LAPを押さえたのはミラクルでんちくん。つづいて、ファラデー・マジック、スーパーモスラ。そして、オルカ、エコノ亀吉、童子03、ステルス、アクア、紀北Tech EV・・・。アレッ?? Hyper USO800が来ないぞ?!と思っていると、スローダウンしたHyper USO800がピットレーンへ入っていく。どうしたんだ!? 齋藤さんによると「モーターの3相のうちの1相がおかしい?」 ということで、コントローラの故障が疑われたが、コネクターを抜き差ししているうちに復帰。どうやら、振動でコネクターが外れかかっていたらしい。ミツバの齋藤運転手兼監督は、約10分間の修理の後、再スタート。8分台の神憑り的なラップタイムで、順位をみるみる上げていく。
4LAPに入ったところで、パーンという大きな音がコース上で鳴る。それまでミラクルでんちくんに続いて2位を走っていた、ホンダエンジニアリングEVERの「オルカ」がスピンしているようだ。昨日の公式練習に続いて2日連続のパンクだぁ!! 強豪2チームのトラブルで、レースは乱戦に突入。 この時点で、ミラクルでんちくん(ZDP)、ファラデー・マジック(東海大)、スーパーモスラ(ZDP)。
つづいて、低重心でコーナーにつよいエコノ亀吉(うにゃにゃん亀吉)、アクア(ホンダエンジニアリングEVER)、新型ステルス(TEAM EPAMS)の順番に。それにしても、最近の神奈川連合平塚支部(EPA、亀吉、東海大)の争いは熾烈ですね。
思い起こせば・・・。4月27日、ZDP&東海大はソーラースポーツラインでテスト走行を行っていた。模擬レースをやっていると、1周を終えたところでミラクルでんちくんが本部前に停車。「チェーンが外れた・・・。」と池上さん。話によると、ピットエンド付近で工事をして埋め戻したときにできたと思われる段差が大きく、それを乗り越えるときに大きなショックを受けるようだ。今年は、振動対策をやっておかないといけないなぁ・・・。もしかすると、この段差を通過する際のショックが影響してトラブルに至ったケースもあるかもしれませんね。
6LAPに入る手前で、スーパーモスラはファラデー・マジックを抜き2位に上がる。8LAPに入ると、アクアもファラデー・マジックを抜き、ミラクルでんちくん、スーパーモスラ、アクア、ファラデー・マジックの順に。
11LAPに入るころには、スーパーモスラがそれまで首位を独走していたミラクルでんちくんを抜き去り、独走態勢にはいった。残り約12分のところで、スーパーモスラは12LAPを終え、13LAP達成を目指す。最後の折り返しを無事に終え、だいたい、これで決まりかなと思いつつも、「まだまだ、僕の運命はこんなもんじゃない」とドライバーの籾井くんは油断していなかった。しかし、そんな中で「スーパーモスラ大破!?」の連絡がピットに入る。籾井くんは大丈夫か? 携帯電話を掛けると「また、やってしまいました。体の方は大丈夫です。」という返事があり一安心。最後の加速でボリュームを全開にしたときに、小石を踏んでパンクしてスピンしてしまったようだ。残り時間はたったの7分。籾井くんの運命との戦いは、まだまだ終わらない・・・。澁谷さんが自転車で救出に向かうものの、こちらも転倒して大破。
優勝はなかよしZDPの「ミラクルでんちくん」、2位ホンダエンジニアリングEVERの「アクア」、3位東海大木村研「ファラデー・マジック」。4位なかよしZDP「スーパーモスラ」、5位うにゃにゃん亀吉「エコノ亀吉」、6位ヨイショット!ミツバ「Hyper USO800」。ミラクルでんちくんを設計製作した池上さんはベストエンジニア賞を受賞。池上マジックは、まさにミラクルを呼びましたね。
「さっ、展望風呂に入って、それから大潟ビーフのステーキ食べて宴会でもするか・・・。」ということで、秋田での2003WEMは幕を閉じたのでした。来年は?きっと13周台での戦いになることは必至でしょう。(k)
おまけ1: キムヒデの気になったもの
健闘した山形県のチームトシヤンは、リアタイヤも動く三輪操舵(3WS)機構突き。first step AISIN AWの「つばさ52号」を想わせます。フロントタイヤの切れ角を小さくできることからボディーが細くなり、空気抵抗の低減に役立つとのこと。 おまけ2: パンク&パンク
おまけ3: 仮面ライダー登場!!
「うわっ!! ショッカーの仕業か!?・・・」 もちろん、こちらの勝手な想像でフィクションなのですが、ミツバの木村元監督の運転するNautilus(ノーチラス)800は2輪のチャレンジとしてがんばっていましたね。
関連リンク:WEM公式サイト http://www2.ogata.or.jp/wem/03wem/03wem.htm
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