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BackNumber〜EV Enjoy Trial in白浜

キムヒデの白浜観戦レポート

2002/10/30 23:30

 2002 World Econo Move Grand Prixの第4戦となる「6thEV Enjoy Trial in 白浜」が、10月26, 27日に和歌山県の旧南紀白浜空港滑走路上で行われた。ZDP勢は、池上&海ペアのスーパーでんちくんが第1ヒート12位、第2ヒート6位、そして籾井&スズポンのスーパーモスラが第1ヒート11位、第2ヒートも11位となった。今回は、キムヒデが見た白浜の大会模様ということで簡単にレポートしちゃいます。

いざ南紀白浜へ
 今回、キムヒデ班は毎年10月末に行われる東名高速の集中工事の影響を避けるために、川崎から那智勝浦までフェリーで移動した。川崎フェリーターミナル17:20発のフェリーは11,000トンと大型で快適である。運賃も、オフシーズンのこの時期は割引が利いて、5m以下の1BOXロング車で21,050円(1人分の2等運賃を含む)と、なかなかリーズナブル。2人目以上は1人あたり7,490円となり、こちらも夜行バスよりも安いくらいだ。さすがに、大勢が高速道路で移動するよりも値段は高くなるが、船内のお風呂に入って、ビールを飲んで、しかも寝ていても現地に近づけるメリットは大きい。そして、結果的に東京湾ナイトクルーズという豪華なオマケも付いてくるので、1度はトライする価値は有るだろう。しかし、混雑していると2等客室は狭いので身長184cmのキムヒデにはちょっときついかも。またエンジンの振動も大きめで、疲れていないとなかなか寝付きにくいですね。でも、来年の白浜へ行かれる人は、フェリーも検討してみてはいかがでしょうか? 大会会場がある南紀白浜は、温泉地として全国的に有名であり右下写真の円月島など観光名所も多いですね。

 

前日の練習走行
 それはさておき、前日に行われた練習走行は雨に見舞われ、コースの確認程度に留まった。・・・ってことは、明日の本戦にかけるしかないのか・・・。 白浜のコースは滑走路上を往復するコースで1周2,460m。滑走路は幅40mほどであり、その両脇の幅員5mのコースを走行する。折り返し点は40m-5m*2=30mの間隔で2本ずつのパイロンがそれぞれに立てられているので、大回りすればr=15〜20mの旋回半径となり、減速しないでターンすることができる。ここを鋭角に切り込めば走行距離が短くなりラップタイムを稼げる。しかし、速度をキープするには大回りのほうが有利である。このあたりは戦略の分かれ目となるだろう。しかも、平らな滑走路というイメージとは裏腹に1%も勾配があり、意外なことに高低差は3m以上に達する。1%の勾配であっても勾配抵抗はぐっと大きくなり平地走行よりも、かなり多くのパワーを必要とする。そして、12V-3Ahの鉛電池を2個搭載し、本線の第2ヒートは1時間の走行時間なので、放電レートは秋田の2倍となり使えるパワーは秋田以下。滑走路のくせに、大潟村ソーラースポーツラインよりも急な坂もあるので一筋縄ではいかないだろう。

第1ヒートはダッシュが決め手
 第1ヒートは、コースを約半周するタイムトライアル。加速性能がものを言うが、途中で折り返しを挟むので、そこでの速度調整も鍵となる。約1200mの短距離戦であり、電池、モーター、キャパシタなどはなんでも有り。
  なんと言っても第1ヒートの目玉は、ル・マン式スタートだ。合図とともにドライバーは30mの距離を走り、3人までの補助員のサポートを受けて車体に乗り込む。若い高校生ならいいが、年寄り(失礼、ベテラン)ドライバーには苦しい条件だ。チームワークを大切にするので、この手のレースとしては珍しく、押し出しスタートは積極的に行ってよい。おかげで、私なんかは靴が脱げてしまった。加速後に控えている折り返しは、速度が出てしまうのでコントロールが難しく、ファラデー・マジックのドライバー菊田くんや、ドッコイショ!ヨツバ (EPA房間さんの車体)を運転したミツバのやなぎさんは、ターンしきれずにコースアウトして草むらへ突っ込んでしまう。

 

 スーパーでんちくんのゴールシーン。よーく見ると、意外と坂がきついのがわかるかな?


 第1ヒートを制したのはヨイショット!ミツバのHyper USO800。ミツバは第1ヒート用にハイパワーモーター(左下写真)を搭載し、これに大型の鉛バッテリーを搭載してイケイケ仕様にしていた。2位は芦田さんのキャッチャーが入る。こちらは、ソーラーカーハーフサイズ用と同等の耐圧性能である48Vまで対応できるコントローラを搭載していた模様(右下写真)。第1ヒートは48Vの高い電圧を利用し、一気に加速して走りきった。

 

第2ヒートの伏兵は風?、坂?、・・・じつはペース配分
 第2ヒートは、雲をつかむような未体験ゾーン。各チームとも様子見の体制を敷いている模様。第2ヒートのポイントはなんといっても、1時間と短い競技時間と強い風である。あまりの強風で、車検に使われたテントが倒れるほどであった。

 

 スタートと同時に本命と思われるHyper USO800が飛び出し、これまた本命のfirst stepのつばさ52号が追走する。しかし、2周目に入ったところで、first stepはステアリング系統のトラブルが発生しコースアウトして止まってしまった。

  

 確固たる信念を持って走っているかのように見えるHyper USO800に対して、スーパーモスラは、紀北TECK EVとともにに追走する。しかし、これが間違いの始まりであった。ミツバの斉藤さんは、ユアサの補充電なしバッテリを、秋田で使用する古河電池のバッテリと同程度のエネルギーが出ると判断してしまったようで、使用可能なエネルギーを多めに見積もってしまったようだ。勝負をしなくてはならない、スーパーモスラの籾井くんは、斉藤さんの実績と勘、そしてWEMのポイント争いから勝負に持ち込まなくてはならないという立場から、Hyper USO800に追走してしまった(と思われる)。スーパーでんちくんに池上さんは、少し後方でペースを刻むが、それでも速すぎでバッテリーがもたない。

 

 淡々と、好位置をキープしていたのは伏兵となり優勝した新美氏率いるアヒルエコパレーシングのPURSUITERや2位となった名城大学のNovaであった。アヒルエコパレーシングはガソリンエコランには出場していたが、EVエコランには今回が初めての参戦となる。この車体を設計したのは、やはり名城大学OBの中岡さんだ(左下写真の右側)。マクソンの24Vブラシモーターをギヤで減速し、さらにチェーン駆動するという2段減速は名城大学と共通している。モーターコントローラーは浪越エレクトロニクス製であった。アルミフレームにプラダンカウルというオーソドックスな仕様でありながら、優勝してしまうところは驚異的である。

 

 3位には地元である紀北工業高校のSpirit of 紀北がおさまった。(ごめんなさい、黄色い方が3位ですが写真がないので赤い方で許して・・・。)前半に飛ばしすぎたミツバは4位に転落し、5位には平塚工業高校の白澤先生のプライベートチームであるチームうにゃにゃん亀吉のエコノ亀吉2号が入賞した。

 

 スーパーでんちくんの池上さんによると、最初から「アウトオブ眼中」なので、マイペースで行ったらしいですが、それでも速すぎでバッテリーが早くへたってしまったらしいです。ドライビングを担当していた海ちゃんによると、2〜3周目までに電池電圧の減り方からオーバーペースに気づいて省エネモードに切り替えたらしい。いずれにしても、傷口を大きくは広げずに6位入賞を果たす。WEMの合計ポイントも20となり3位となった。「高校に負けちゃうとねぇー・・・。」と池上さんは不満そう。東海大学木村研究室のファラデー・マジックは、他車の動きにつられることなく序盤からマイペースを維持し、最後の2周で順位を躍進させた。スーパーでんちくんまであと88mにまで迫ったものの7位に留まった。

 

 スーパーモスラの籾井くんは、今回は11位という不本意な成績に留まった。「齋藤さんを信じて、Hyper USO800について行ってしまったのが敗因です。スピードは出し過ぎだとは感じていたけど、まさか斉藤さんが計算をミスってスローダウンするとは思いもしなかった・・・。」この前半の飛ばしすぎが傷口を広げ、順位を落としてしまった。さらに付け加えると、籾井くんが使用した秋田用の自作DDモーターは、巡航速度が40km/h程度以上を得意とする高速仕様であるので、このコースとの相性はあまり良くなかったことも不利な材料であった。

レースの技術レポート
 今回のレースは2個の12V-3Ahを1時間で使い切るというレースであった。秋田のWEMでは80kmに近い距離が出ることから、35km程度の記録がでることを期待していたチームもあったようだ。補充電なしの加温で、1時間の放電レートでは12Vで約4.4Ah程度(24Vで2.2Ah)の放電量が期待され、私のシミュレーションでは1時間の走行では30km程度の記録しか出ないだろうと予測していた。この速度では、ミツバのWEM用ノーマルDDモーターにとって遅すぎであり、常にPWMでモーター電流を絞った状態で走行するしかなかった。また、特殊電装製モーターにとっても、1段減速で速度を落とすことが難しい領域に入り、いずれにしても、セッティングが苦しい状態にあった。マクソンモーターを使った名城大勢は、この低速用のセッティングをうまく行えた?ことが勝因につながったのかもしれない。
 勾配抵抗や風の影響もくせ者で、判断を迷わせる原因となった。TGMYの芦田さんは、低速セッティングされたスペシャルミツバDDを使用していた。さらに、勾配抵抗の影響をテストできるモーターベンチを使用してデータを取っていたようである。この装置は大変便利そうで、コントロール部で勾配を設定すると、タイヤについているローラーが回転し、電磁ブレーキが働くことで抵抗を発生させている。

 

 東海大はやむを得ず、日本ケミコン製電気二重層キャパシタを大量に使う作戦を採用し、400F(定格13.5V)と巨大な静電容量のコンデンサをバッテリーに並列に接続し、放電レートを少しでも緩和できるようにした。
 名城大は、空気の剥離点前で微小な乱流を発生させ、トータルの空気抵抗を減らす、ボルテックス・ジェネレーターをカウル前部に取り付けていた(左下写真)。ミツバは、世界的にも貴重なエコラン用のミシュランラジアルタイヤをレース本番で使用していた。

 

 レース終了後には技術交流会として、チーム・カンダによる燃料電池の実演および燃料電池車のデモ走行が行われた。左下写真は燃料電池のデモ実験の様子である。青いケースに入っているのは水素吸蔵合金ボンベであり、この中に水素ガスが蓄えられている。その上にあるのが、出力200Wの燃料電池であり、電球を3個点灯することができたようである。この燃料電池をエコランカーに実際に搭載して走行する様子が披露された。外から見る限りは、モーター音だけであるので、通常のバッテリーによる走行とまったく一緒である。燃料電池とバッテリーの区別はつきにくい。これでは、一般の人に違いがわかってもらいにくいので、もう少しわかりやすくする演出が必要であるように思えた。
 2003年度は、WEMやJISCなどで燃料電池車のデモレースが積極的に展開されそうである。NOxなどの有害ガスを排出せず、エネルギー利用効率の高い燃料電池車は、今後盛んに研究開発が広く行われるようになるだろう。

 

 今回の白浜はZDP陣営としては、不完全燃焼に終わってしまった。キムヒデは残念ながら仕事で行けませんが、最終戦となる豊田のレースでは、池上さん、籾井くんたちは、精一杯戦ってくれることでしょう!? (k)

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