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EVエコランin菅生 キムヒデレポート

2002/08/28 12:50

 

スポーツランドSUGOで、第8回電気自動車エコラン競技大会が開催された。優勝したのは、なんとZDPのスーパーでんちくん強力。1997年にデビューし今年で6年目のでんちくんは、数多くのタイトルを手中に収めてきたが、最近は空力性能で他チームの新型車に遅れをとり優勝から遠ざかっていた。最後に優勝したのは2000 WSBRなので2年ぶり。菅生では初優勝。でんちくんは死なず?

それでは、レースを振り返ってみましょう。宮城県村田町にある菅生サーキットは、1周3.7kmのコースの中に70mもの標高差がある山岳コース。限られた電気エネルギーで走行するワールド・エコノ・ムーブのシリーズ戦の中でも、最難関のコースだ。この高低差をいかにして克服するが勝負の分かれ目であり、エンジニアの腕の見せ所だ。通常のソーラーカーやEVエコランでは、空気抵抗様に逆らうと痛い目にあう。しかし、菅生では勾配(登坂)抵抗様が一番偉い(大きい)ので、こちらを第1に優先して考えるのがポイントだ。今回のでんちくん用モーターを用意したミツバのウッチさんと竹本さんは、「うちの最近の若い者は年寄りの言うことを聞かない。このモーターでうち若いの打ち負かしてビシッと教育してやってください。」ということでZDPに合流。ヨイショットミツバ内からは裏切り者の名を受けているらしい。 今回、ミツバさんから提供されたモーターは、2002 WSRフリークラスで優勝した東海大搭載のフルサイズソーラーカー用プロトタイプの巻き線を巻き直したもの。なので小型のエコランカーにとっては超強力だ。このモーターは、もともとソーラーカー用に設計されているので、ミシュランのソーラーカー用ラジアルタイヤ(65/80-16)をGHクラフトのカーボンホイールに取り付けたものを装着している。スタート時にはホイールスピンでコース上にブラックマークを付けながら、でんちくんは加速していった。本当に、これってエコランレースなの?

 

このモーターに組み合わせたのが日本ケミコンの電気二重層キャパシタ。活性炭を電極とした大容量の新型コンデンサである。こちらもパワーが大きいので、このじゃじゃ馬モーターとは抜群の相性。頼んだぞ。昨年のモスラではすでに、電池で坂を上っている時以外は、DC-DCコンバーターを通して電池から回生用キャパシタに軽く充電し、キャパシタ走行時間を長くすることで少しでも電池の放電レートを下げる作戦をとった。今回、作戦参謀を務めるキムヒデ(木村英樹)は、電池からキャパシタに一定電流を流しつづけ、電気エネルギーのダムとなるキャパシタに連続充電(水を蓄えるように)する戦法を採用した。このエネルギーダムには強力で大型なモーター兼発電機が付いているが、これを直接駆動するのは電池ではなくキャパシタだ。キャパシタは充電されると電圧が上がり、放電すると電圧が下がる。このキャパシタの静電容量を最適化することで、速度範囲をキャパシタ電圧範囲としてセッティングすることが可能だ。そのため、モーターコントローラーは原則としてスロットル全開(PWMなし)としている。モーターと同様に、キャパシタもパワー出しまくりなので、操作をミスったりすると、パワー炸裂でホイールスピンしちゃったりロックする訳だ。まさに両刃の剣?のような関係だ。配線の接続作業は緊張の連続で、だんだん車体が爆弾に見えてくる。詳しい戦略の方は、長い話になりそうなので、またどこかでね。

 

さて、空力面では不利な「でんちくん」で有利に戦うためには、小型軽量運転員である海ちゃんしかない。あるチームのドライバーは、「こんな急な登り勾配がいけないんだ!!」と坂にあたっていたが、勾配や重力はどの車体にも同じように存在しているので、実は偉大な勾配抵抗様を生み出したのは自分自身の体重なのだ。自業自得。体重が増えつつある池上さんは、この無情な法則を理解し数年前からドライバーの座を海ちゃんに譲っている。でも、運転できなくてもレース運びは勝負師池上さんが司令官だ。キムヒデがじゃじゃ馬モーターをキャパシタで押さえ込んだように、池上さんもじゃじゃ馬ドライバーをコントロールしなくてはならないのだ。ドライバーの海ちゃんは、これまでにもスバルやミツバそして身内のモスラであっても激しいバトルを繰り広げてきたので、今回のモーターと同様に扱いが難しい。ライバルが近づくと危険だ。しかも、数多くのレースで優勝経験があるZDPであっても、この菅生サーキットだけは一度も優勝したことがない相性の悪いコース。さすがに池上さんも「このレースはひさびさにプレッシャーを感じる。」とレース前に漏らしていた。

 

昨年19周の新記録で優勝したホンダエンジニアリングのAQUAは3周目に入って電気系(モーターコントローラ?)のトラブルで馬の背の先あたりでストップの模様。昨年2位のヨイショットミツバは新旧2台のUSO800で参戦したが、新型のHyper USO800は左フロントのパンクで、AQUAと同じく馬の背の先?でストップ。ライバルと見ていただけに残念。

 

旧型USO800が追走するもスピードダウン。でんちくんは一人旅になってしまった。こうなったら、ただ勝ってもしょうがない。2時間以内の周回数を競う新ルール(昨年までの旧ルールだと最後の1周のゴールは2時間を超えてもよい)でダントツの新記録21周狙いましょう!! 5分前半の驚異的なラップを叩き出し独走態勢に。しかし、20周目を回っているうちにバッテリー電圧がダウン。充電ボリューム全開で21周目に突入するも馬の背から先の登りで力尽きる。それでも、でんちくんは新記録の20周で優勝だ!!

 

これまで、無冠のドライバー海ちゃんもエコランでは初めて優勝カップを手にした。「うれしーぃ。これでベテランドライバーのみんなに仲間入りできたぁ」

一方、籾井隊長率いるモスラは自作のアモルファスDDモーターがなかなか出来上がらない。はたして間に合うのか? 5月の秋田でのエコノムーブではモスラはギリギリ間に合っただけに、普通なら絶体絶命な状況でも、間に合っちゃうのかも?という期待は消えることがない。レース当日の6:30に東京を出発し、菅生に着いたのはAM11:00頃。時間がどんどん過ぎていく。とりあえず、車検を通してモスラの軽量運転員の菊田くんとメカニックの立脇氏がコース上に待機。(実は籾井くんも最近、登坂抵抗様に負け気味らしい。)ピットでは小森君、渋谷さんがモーターを製作する籾井くんを手伝う。さぁ、あとはモーターだけだ!!

 

あっダメだ。結線が間違っている・・・。無情にもレース中にモーターが回ることはなかった。事前のシミュレーションでは、スーパーでんちくん強力よりもさらに上を狙えると予想されていただけに残念。それでも、なんとか大会終了後に組みあがり、調子良さそうに動き始めて注目を集めた。

 

籾井くんは、48時間作業し続け移動中に仮眠しただけでレースに臨んだ。もちろん、睡眠不足の日々はその前からずーっと続いていた。籾井くんお疲れー。「今回は情けない結果になってしまいました。」まさにチーム内で明暗を分ける結果となった。

来年の菅生は、さらにすごい戦いが待っているだろう・・・。(k)

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